そして、鈴木氏がこう締めた。
「間違いなく日露関係は動くと思っています。去年(2015年)の12月28日、安倍総理から『官邸でお会いしたい』と言われて45分間話をしました。『来年(16年)はやる。歴史を作る』という話でありました」「安倍首相は率直に言っていました。『“ロシアに行く”と言うと、(米国から)“行くな”と言われる。“(ロシア首脳を日本に)呼べば”と言うと、“呼ぶな”と言われる。しかし来年(16年)は日本の立ち位置で俺が判断する』と。非常に力強い話でした。(安倍首相は)『鈴木さんがやってきた流れをしっかりと踏まえて日露関係に取組む』と言ってくれました」
しかし「2島先行返還の実現可能性は高い」と言い切ったロシア通3人組の予測は、見事に外れた。ロシアの食い逃げを許す屈辱的外交交渉の片棒を担いだと言われても仕方がないだろう。
一方、高笑いしているに違いないロシア側の鼻息は荒い。大型事業「シベリア鉄道の北海道延伸」(約1兆円)と「天然ガスパイプライン敷設(サハリン~日本)」(約7000億円)を提案しているのだ。12月17日付の読売新聞は、次のように報じた。
「ロシア極東発展省のシェラハエフ極東投資輸出局長は16日、東京都内で読売新聞などの取材に応じた。ロシア側が日本政府に提案したシベリア鉄道の北海道への延伸や、サハリンと北海道の間をパイプラインや送電線でつなぐ大型事業案について、『実現の可能性は大きい』と期待を込めて話した。パイプラインを延ばす計画では、『日本企業と積極的に話し合いをしている』と強調した」
また飯島勲著『リーダーの掟 プーチン絶賛の仕事術』(プレジデント社)を見ると、シベリア鉄道北海道延伸計画は「飯島プラン」と名付けられ、「私の残りの人生のすべてをかけて実現させようと考えている」と飯島氏は意気込んでいた。
「総事業費は九〇〇〇億円」とも試算。すでにサハリンには日本の統治時代に建設された鉄道があり、樺太(サハリン)と宗谷海峡を隔てた稚内の間の未着工区間は約90キロで、日本の工事単価「線路一キロメートル当たり一〇〇億円」をかけて9000億円と見積もっていた。そして飯島氏はこう結論づけた。
「プーチンにもこの『飯島プラン』は届けた。ついには、プーチンからの了承を書面で得ることができた。残るは、日本政府だ」
しかし元サハリン駐在の商社マンの杉浦敏広氏(環日本海経済研究所・共同研究員)は、「経済合理性をチェックすべき」と警告していた。