「電通ウェブサイト」トップページより
9月23日に電通が記者会見で公表した、ネット広告の不正問題。クライアントに対して電通は広告料の過剰請求や実績レポートの虚偽報告などを行っていたとし、現時点でこうした不正が疑われている取引は広告主111社にものぼる633件、取引総額は約2億3000万円。さらに広告掲載をしていないのに請求を行っていた取引は14件、約320万円分あったという。
過剰請求のみならず架空請求まで行っていたとはかなり悪質な問題だが、会見には社長は出席せず。しかも、電通は当初、文書で「複数の不適切業務が行われていた」と表現。会見でこの点を追及されると、電通側は「不適切という表現をしていますが、まあ、不正と読み替えていただいても結構です」などとふてぶてしくも述べた。
だいたい、問題の公表自体も、追い込まれた結果ようやく行ったものだ。そもそも問題が発覚したのは、今年7月にクライアントであるトヨタからの指摘されたことだったが、電通は指摘を受けたあとも公表しなかった。だが、9月21日にイギリスの経済紙フィナンシャル・タイムズが不正問題をめぐって電通がトヨタのほか100社以上の企業と緊急の会談を行っていると報じ、つづいて同日にアメリカの経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルも報道。そのために電通は記者会見を開かざるを得なくなったのだ。
ご存じの通り、世界一の巨大広告代理店である電通は日本のメディアにとって最大のタブーとなっている。現に、東京五輪招致委員会が2020年五輪の東京招致のために2億3千万円もの裏金をばらまいていた件も最初に報じたのはイギリスのガーディアン紙だったが、同紙は裏金疑惑に電通が関与しているのではないかと実名をあげて言及していたにもかかわらず、当初、国内メディアは一切電通にはふれなかった。
このように、電通の問題をテレビや新聞が取り上げないということを電通側も熟知しているため、今回の不正問題も表沙汰にならないかぎりは内部で処理するつもりだったのだろう。
というのも、2000年に発覚した自動車メーカー・スズキへの3億円にものぼる広告料不正請求・受領事件も、今回と同じような構図だったからだ。