「恒久的遮水壁には、完全な遮水性以外に、いつどのような地震や津波が来てもすべてを守り抜く、超長期に亘る堅牢性も求められている。しかし廃炉はともかく、このくらいの壁であるなら、現在の日本の土木技術で、すぐにでも現実可能のはずである」
汚染水問題は決して解決不可能ではない。しかし現実は安倍政権と電力マフィアの私利私欲のために汚染水問題さえもが利用され、実効性のない「凍土壁」プロジェクトがいまも進んでいる。莫大な国費が投じられ、1日400トンもの汚染水が行き場もなく増え続けているにもかかわらずだ。
そしてもうひとつ、福島原発廃炉に関してあまりにふざけた事態が進行しつつある。政府は原発の廃炉や事故賠償として、今後新たに生じる8兆円以上もの費用を国民に負担させる方針で調整に入ったのだ。
実際、経済産業省では福島原発だけでなく電力9社が保有する原発の廃炉費用も、送電料、つまり電力利用者の負担とするための有識者会議を設置し、来年の国会に電気事業法改正案を提出する予定だ。この改正案が通れば標準家庭で毎月数10円から200円ほどの値上げとなり、しかもその後も費用が不足すれば、利用者の負担とし自由に上乗せ、徴収できるとの内容も含まれているという。
加えて大手電力会社が持つ送電網の使用料として、再生エネルギーなどの新規電力会社に対しても同様に費用を上乗せすることも検討されている。電力会社が所有し責任をもっていたはずの原発で起こった事故の費用を、電力を使わざるを得ない全消費者、国民全体に付け回そうとしているのだ。
誰が国益を損ね、国民の健康を軽視し、汚染水流出という国際的非難に当たる行為を放置し、さらに東京五輪の“障害”をつくり出しているのか、これでもう明らかだろう。
現在の政府、電力会社に任せていたら、本当に日本は崩壊してしまうかもしれない。
(伊勢崎馨)
最終更新:2017.11.24 07:03