また、同書には元警察官で現在は犯罪ジャーナリストの小川泰平氏によるインタビューが掲載されているが、その小川氏はこんなことも語っている。
「正月には刑事課長が部下全員を自宅に呼んで、酒や料理を振る舞ってくれた。団地住まいなので、15人、15人で2回に分けてね。そこで上司は、部下の私生活や性格を知るんです。“身上監督”といって上司の職分だったんですね。
たとえば、彼女がいなくて、アキバにはまってる部下がいたら、上司はちょっと注意して見ることもできるわけですよ」
違法薬物にはまっているのならまだしも、AKB48にはまろうとアニメにはまろうと「注意」される謂れなどないが、こういった発言が元警察官の口からごく当たり前に出てくるところからも警察組織のストレスフルな環境がよく分かる。
こういった厳格な縦社会は当然さらなる理不尽なパワハラを生む。上司よりも高い車に乗ったり、良い腕時計をしてはいけなかったり、上からの酒の誘いは何があっても断ることができなかったり……。実際、こういった構図が表沙汰になった事例もある。
12年3月、神奈川県警大和署の男性警官らが後輩の女性警察官との酒の席で服を脱ぐことを強要したり、強引にキスを迫ったことが発覚。男性警官のこのような行動に対し、女性警察官らは逆らえば今後の仕事に影響が出るのではと思ったと発言している。この事件は特殊な例などではなく、氷山の一角に過ぎない。
そして、もうひとつ挙げられているのが、警察の「身内に甘い」体質だ。殺人や強盗などの悪質な犯罪でない場合は、実名が報道されないことも多い。実際、前述の性犯罪の数々も、新聞報道では名前が載っていないものがほとんどだ。またさらに、不祥事が原因で職場を去ることになった場合でも、彼らにはその後のキャリアが用意される。前述の小川泰平氏は同書のなかでこのように語っている。
「上司にもよるけど、警備会社などの就職先を紹介されることもあります。私も実際に退職した人を紹介したことがあります」
このような体質が警察組織のなかに残り続けている限り、これからも警察官の不祥事はなくなることはないだろう。
(田中 教)
最終更新:2016.08.28 11:02