また、これは衆院が解散されたときの規定で衆院の任期満了の規定ではないが、〈衆議院が機能しない場合に参議院が国会に代わって活動するという緊急集会の趣旨からすれば、緊急集会を求めることは憲法に適合すると解釈でき〉る(永井幸寿『憲法に緊急事態条項は必要か』岩波書店)。
逆に、田崎氏が主張するように国会議員の任期延長を憲法上で認めることは、議員がいつまでも居座りつづける可能性も孕んでいるのである。
しかも、田崎氏はあくまで“ソフト”な面しか語っていないが、安倍首相が「ベースにする」と言っている自民党憲法改正草案における「緊急事態条項」は、まったく様相が違う。
この田崎氏が強調している国会議員の任期延長は、憲法改正草案における99条4項でふれられているが、98条と99条の他の項では、内閣に権限を集中させ、総理大臣が「緊急事態」だと言う限り衆院の任期延長を可能にさせ、事実上の「独裁」状態を実現できるものになっている。さらには人権も制限され、言論や報道、集会などの自由も奪われかねない、非常に危険なものだ。
しかし、そうした危ない話に踏み込まず、田崎氏は「憲法でつくるほかないんですよ」と言い張るのである。
さすがは“御用ジャーナリストの鑑”である御仁らしい働きっぷりだ。本サイトでは先日、田崎氏は安倍首相と頻繁に会食を繰り返しているだけでなく、水面下で自民党から「組織活動費(遊説及旅費交通費)」という名目で“現金”まで受け取っていたことを報じたが、もはやこの人は安倍政権の広報係なのである。
で、その広報係が選挙の翌日にさっそく動き出した通り、今後自民党は緊急事態条項の危険な本質は隠して、まずは田崎氏が主張するような“なんとなく必要そう”な雰囲気を醸すソフトなものから俎上に載せていく方針なのだろう。
さらに、田崎氏は緊急事態条項だけでなく、今回の選挙で合区の投票率が下がっていることを挙げて、「都道府県やっぱり最低1人は出そうよと憲法に書いておけば、一票の格差っていうのは問題なくなるわけですね。そういうことは、多くの人がやるべきだと考えるのではないかということです」と解説した。つまり、緊急事態条項とあわせて、「一票の格差」問題を是正するための参院選挙制度の改革も“お試し改憲”で行うつもりらしい。