もちろん、百田が本気で都知事選に出馬しようと考えているかどうかは疑問、というか、冗談の可能性のほうが高いだろう。だが、たとえ冗談でも、この男に「東京都知事に立候補しようかと真剣に考えている」などと言う資格はない。
というのは、百田は前回の2014年都知事選のとき、出馬した田母神俊雄元航空自衛隊幕僚長を大絶賛していた責任があるからだ。
このとき、百田はNHK経営委員という立場でありながら田母神の応援演説に複数回にわたって登場。「非常に尊敬してます」「この人は男だ、立派な日本人だ」「田母神俊雄氏は本当にすばらしい歴史観、国家観をおもちです」とこれ以上ないくらいの賛辞を述べたうえ、田母神以外の候補者を「私から見れば人間のクズみたいなもんです」と言い放った。
だが、その都知事選後、田母神の政治団体をめぐって計約5500万円にものぼる多額の使途不明金問題が浮上。しかも、選挙運動の報酬として現金を配っていたことが発覚し、ついには今年4月、田母神は公職選挙法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕されるにいたった。
ちなみに、田母神はこの5500万円の中からキャバクラや自分の離婚訴訟の費用まで支出していたという報道もあった。
落選したとはいえ、このような人物の応援を買って出て、61万票も集めることに百田が加担したことは間違いない。なのに、田母神の逮捕後は〈うーん…どこの事務所でも運動員に日当は払ってるのでは。〉などと述べ、〈ちなみに私は1日つぶして田母神氏の応援演説をやったが、1円どころか交通費さえ受け取っていない。〉と弁解しただけ。有権者に対して、自身の責任を詫びることさえ未だしていない。
『殉愛』騒動でも、記述の嘘やデタラメが露呈しても見苦しい言い訳に終始し、証人として出廷した裁判でも逆ギレする始末だったが、田母神の都知事選における公職選挙法違反問題も、まるで自分は関係ないと言わんばかり。そんな人間が、おめおめと「東京都知事に立候補しようかと真剣に考えている」と言い出すとは、図々しいにもほどがある。