家族が犠牲になっているから知事の特権を利用するのは当然──。こんな理屈が通るなら、舛添都知事が家族旅行を会議費で収支報告していたことだって「知事ファミリーとして当然」となってしまわないか。それを平然と正論のようにぶってしまえる、これが橋下氏の恐ろしさだ。
さらに、橋下氏はこう畳みかけた。
「僕、さっき森永さんの私物のところにサインしたじゃないですか」
「人のこと批判しておいてね、それ公私混同じゃないですか」
サインをもらいに来た森永氏だって公私混同してるじゃないか、と言うわけだが、これはまったく反論になっていない。森永氏が問題にしているのは“権力者による公私混同”であって、森永氏は政治家でも何でもない、たんに共演者にサインをもらいに行っただけだ(ちなみに森永氏の趣味はサイン収集)。問題のポイントは権力を利用しているかどうかなのに、それを橋下氏はお得意の話のすり替えで矛先をずらしたのだ。
こんな口だけ達者な男が都知事になったって、大阪の悪夢が東京で繰り返されるだけだが、本人いわく、都知事選への出馬は「絶対ないです」。この人の「絶対ないです」ほど信用できないものはないが、すかさず女性学研究家の田嶋陽子氏に「大阪府知事のときだって絶対ないって、200%ないって言って……」と追及されると、橋下氏は「2万%です」と余裕たっぷりに自ら“訂正”。こうしたやり取りを見る限り、橋下氏はウソをついたことをまったく意に介していないどころか、もはや正当化しているようである。
ウソつき総理だけでも手に負えないのに、ウソつき都知事も加わったら、一体どうなるのか……。想像するだけで背筋が凍るが、だが、じつはどうやらこれが現実化する可能性が高まっているらしい。
しかも、それは考え得るなかで“もっとも危険”なシナリオだ。
「衆参ダブル選を見送った安倍首相ですが、リオオリンピックが終わった9月、10月あたりに、衆院を解散させるつもりのようです。この解散選挙を、都知事選とのダブル選にする。もちろん、都知事候補者として担ぎ出すのは、橋下氏です」(大手新聞社政治部記者)