たとえば、ラジオのレギュラー番組『LOVE in Action』で共演するラジオDJの山本シュウ氏は、本書に寄せたコメントで、小林とのこんなエピソードを紹介している。
〈飽きっぽいマヤッチには「結婚せんでええやん! フランス婚でいこうや!」と言っています。だから「女性の幸せは結婚して子どもを産むこと、っていうのは極端やん! マヤッチ、女性の幸せはひとつじゃないって言ってくれよ」と言ったのですが、本人は「う〜ん、でも結婚したいな」と、そこはなかなかかたくなでした〉
また、小林本人も、「結婚したい」と言い続けてきた自分のことを、こう振り返る。
〈みんなと一緒じゃないと不安になることもあります。だから「結婚したい」と言っていたのかもしれません〉
前述したように、彼女はやりたいと思ったことをすべて叶えてきた。もちろん、たんに“かわいい”を武器にしただけでそんなことは実現できない。性格の生真面目さを見ても、他人には窺い知れない努力を重ねてきたはずだ。ただ、社会の尺度上の“優等生”であるがために、「女の幸せは結婚」という強迫や、「女は適齢期に結婚するもの」という世間の同調圧力に抗えないのではないか。そんな気がするのだ。
当然、小林は、女にばかり選択を迫る社会構造のおかしさを重々承知していて、〈結婚しているのも、結婚していないのも、それぞれのいまの選択だと思っています〉と述べている。しかし、そのすぐあとにはやはり〈相手は王子さまではなくていいのですが、結婚にはやっぱり憧れています〉と語るのだ。
どうして結婚をしたいのか、その明確な理由を小林は「はっきり言えない」という。よくわからないものを夢見ながらも、違和感を抱き続ける。じつはこの社会には、小林と同じような思いで悩んでいる女性も、まだまだ多いはずだ。
本書のなかで小林は、結婚しない自分のことを、〈どの選択も自分にはハードに思えて、ただ傷つきたくないからひとりでいる。ひとりでいると楽でそのぬるま湯に浸かっている、ということなのかもしれません〉と書いている。でも、ひとりでいることを選ぶ、その選択は「ぬるま湯」なんかではなく、社会の「結婚して一人前」という圧力を考えれば結構ハードなことだ。ひとりできちんと生きられている。小林がそのことにもっと自信をもって、「結婚してもしなくても私は私」と言える日がくるといいのだが……。
(田岡 尼)
最終更新:2017.12.05 10:23