この〈親しみやすさのないブスって最悪〉というのは、まさにセクシスト男性そのものの考え方だが、そうした思考のもとでプロデュースされ、アイドルグループの頂点に立った彼女は、すっかり“オヤジの言うとおりにすることが正解”と信じるにいたってしまったようにも思えるのだ。
事実、指原の“処世術”は、当然ながら“最高権威”の安倍首相にも存分に発揮された。安倍首相が出演した『ワイドナショー』で松本人志から「子ども何人くらいつくろうとしてるの?」と問われた指原は、「産めれば産めるほど産みますよ。国に貢献したい」「身体の限界が来るまで産みます」「安倍さんの話を聞いて、私もちゃんと子どもを産んで、しっかりお母さんにならなきゃって思いました」と前のめりになって発言。
その上、この指原の言葉に大満足な表情を浮かべていた安倍首相は、「かつ仕事もね」と念押し。女にあれこれ押し付ける前に産みやすくて働きやすい社会を先につくってよ!と多くの女性はツッコんだことだろうと思うが、指原は「はい、しっかり仕事もします」と即答した。
また、松本への対応も同様だ。セクハラツアー騒動が取り上げられた『ワイドナショー』では、東京五輪の贈収賄疑惑について「ロビー活動ってそういうことなんじゃないのかって、ぼくはもう思ってましたけどね」と松本が言うと、指原は「私もまったくそう」と同調。「そういうものだと勝手にどっかで思っていて、このニュースをきいたときも『あ、明るみになっちゃいけない出来事なんだな』じゃないですけど、オープンなことじゃないんだなって思ったんですよね」と話し、松本と一緒になって贈収賄疑惑の問題を“世の中ってそんなものじゃない?”と掻き消した。
そもそも、指原がアイドルとして革新的だったのは、自らのスキャンダルを逆手にとり、アイドルにだって当然性欲はあるのだと価値観を崩したことにあったはずだ。それなのに、権力をもったオヤジの太鼓持ちをして、性差別的な言説に無自覚に加担するというのは、あまりにもつまらない。そんな古いやり方にしがみつかないでも道を切り拓く、その強さを指原はもっている。そう思うからこそ、いまの指原の立ち振る舞いは残念でならないのだが……。
(田岡 尼)
最終更新:2016.05.25 05:50