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憲法報道は民放もヒドかった! 日本テレビが吉田茂証言の一部を切り取って歪曲し「GHQ押し付け論」展開

 そして、決定的なのは、吉田は同著で9条の“発案者”について「私の感じでは、あれはやはりマッカーサー元帥が先に言いだしたことのように思う」としながらも、続けてこう述べていることだ。

〈もちろん、幣原総理と元帥との会談の際、そういう話が出て、二人が大いに意気投合したということは、あったろうと思う。〉

 つまるところ、『every.』は、吉田の発言の一部だけを取り出して、あたかも“9条の発案者はマッカーサーであって幣原でなく、したがって平和憲法はアメリカの押し付けだ”とミスリードしていたのだ。これは、あきらかに中立に見せかけた安倍政権へのアシストだろう。しかも、日本テレビはネグっているが、当の吉田は「押し付け論」についても、こうはっきりと批判しているのだ。

〈然るに、この憲法については、それが占領軍の強権によって日本国民に押しつけられたものだとする批評が近頃強く世の中に行われている。それは改正論議が喧しくなるに連れて特に甚だしいようである。しかし私はその制定当時の責任者としての経験から、押しつけられたという点に、必ずしも全幅的に同意し難いものを覚えるのである。(略)交渉経過中、徹頭徹尾“強圧的”もしくは“強制的”というのではなかった。わが方の専門家、担当官の意見に十分耳を傾け、わが方の言分、主張に聴従した場合も少なくなかった。(略)そういう次第で、時の経過とともに、彼我の応酬は次第に円熟して、協議的、相談的となってきたことは偽りなき事実である。〉(前掲書より)

 さらに言えば、吉田は同著の中で、日本国憲法の草案は、枢密院、衆議院及び貴族院での審議、一流の憲法学者らが「縦横無尽に論議を尽くした」経緯があることから、「我が国の国民の良識と総意が、あの憲法議会に表現された」と綴ってもいる。本サイトでも指摘したとおり、現在の日本国憲法の草案は、戦後初めての男女普通選挙で国民に選出された議員によって採択されたものであり、当時毎日新聞1946年5月27日付に掲載された世論調査でも、象徴天皇制の「支持」が85%、戦争放棄条項の「必要」が70%という結果が出ているのだ。

 こうした“民意”の表れを無視して、議論の分かれる9条の発案者についての“マッカーサー説”のみ大きくスポットを当てる日テレのやり方は、繰り返すが、その根底に安倍政権への忖度があるとしか思えない。

 本サイトは、今年の憲法記念日の前後の特集で、櫻井よしこ氏や百田尚樹氏ら日本会議界隈の確信犯的デマゴーグぶりを明らかにした。だが、真に恐ろしいのは、こうした極右連中より、安倍政権の顔色を伺って、無色にみせかけた“改憲世論操作”を行う大マスコミのほうかもしれない。

 安倍政権とその取り巻きが仕掛ける改憲プロパガンダの嵐のなかで、われわれには、このさりげない、しかし狡猾な嘘を見抜くリテラシーが必要とされている。
(宮島みつや)

最終更新:2016.05.05 09:04

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