一方で、自民党は2014年末の総選挙時、アベノミクスの効果を実感しないという街頭インタビューに安倍首相が激怒し、在京テレビキー局に対し“公平中立ならびに公正な放送”を要請する文書を送りつけている。
それが、今回は、選挙期間中に自民党党首である総理が野党の同席もなく単独でテレビに出演し、人気芸能人たちとイメージアップのためのトークを繰り広げようとしたのだ。これこそが明らかにテレビ局の“公正中立”に反する行為だろう。
しかも、フジと官邸は大地震が起きたことで、放映を急遽中止したはずが、わずか2週間でこの偏った露骨な首相接待番組を放送した。
ところが、そのことを誰も批判しようとしない。『報道ステーション』(テレビ朝日)や『NEWS23』(TBS)がほんのすこし政権の批判をするだけで「偏向報道」と騒ぎ立てるのに、ただ「安倍首相が松ちゃんにこんなことを言った」というニュースと嬉々として報道するばかりだ。
今回の出演で、安倍首相と官邸は『ワイドナショー』を『そこまで言って委員会NP』(読売テレビ)や『情報LIVEミヤネ屋』(日本テレビ)に並んで自分の応援番組になると認識したはずだ。そして、これから先、何か大きな政治的PRを仕掛けたいときは、必ず登場するようになるだろう。そのたびに、松本との馴れ合いの会話を繰り返し、ヤフーニュースになり、それが世論の地ならしに役割をになっていく。本当にこの国のメディア状況はどうかしているとしか思えない。
(野尻民夫)
最終更新:2016.05.03 10:34