そして、この“安倍サマ接待番組”で、一番、接待モードが露骨だったのが、松本人志だ。
冒頭から、「本番前に挨拶できなかったんで、むかっ腹が立ってるみたいなことはないですか?」などという卑屈なギャグを飛ばしたのを皮切りに、とにかく、異常に緊張しながら、ひたすら安倍首相をもちあげ続ける。そして、「松本さん、安倍首相に質問は?」とふられると、「えーなんやろなんやろ」と慌てながら、こんなことを口走り始めた。
「僕やっぱりあのー、おじいちゃん子だったんですね。で、小学生ぐらいのときにまあ僕のおじいちゃんは亡くなったんですけど、でもおじいちゃんのことが大好きで、やっぱりおじいちゃんたちが守ってきたなんかこの日本ていうのが僕はやっぱり大好きなんですよ。ついつい人は未来のことばっかり言うんですけど、でもなんか過去の人たちが今の日本を見たときに、ああよかったなあ、がんばっただけのかいあるなあて思ってもらわないと、これはもう未来なんてないと思うんですね。だからなんか僕はこう……なんつーんですかね、どこの国にも指図されたくないし、もうどこの国にも謝ってほしくないなって思うんですよ」
なんだろう。このネトウヨでも言わなさそうな頭の悪い発言は。松本が最近「正論」(産経新聞社)で絶賛されるくらい右ぶれしていることは知っていたが、しかし、松本の芸人としてのスタンスからすると、そういう思想をもっていたとしても、目の前の人物に露骨に迎合するような言葉をテレビで発言するなんて恥ずかしいことは、ありえなかったはずだ。
おそらく、松本人志という芸人は想像以上に、権力に対して弱いポチ体質をもっているということなのだろう。実際、松本は安倍首相が退場するとき、座ったまま4回ほど頭を下げた後、最後にさらに立ち上がり、90度体を追って深々とお辞儀していた。こんな礼儀正しい松本は見たことがない(ちなみに、他の出演者は1〜2回頭を下げただけだった)。
しかし、今回の『ワイドナショー』については、テレビの世界で王様のようにふるまっている芸人の権力迎合体質をからかってすむような話ではない。
当サイトが指摘してきたたように、安倍首相の『ワイドナショー』出演はもともと、北海道補選のテコ入れのために、投票一週間前の4月17日に放送しようと仕掛けられたものだった。