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「売れてる本」の取扱説明書⑤『ルポ 塾歴社会』(おおたとしまさ)

東大合格への登竜門「サピックス」「鉄緑会」が有名進学校を支配! 平等性を喪失させた“塾歴社会”

 著者は言う。「日本の教育の平等性や公正さの中で発展してきた受験システムが『制度疲労』を迎えている」と。制度疲労の弊害を真っ先に食らうのは、一概には言えないとはいえ、塾ではなく学校でもなく、個人。今現在、大学入試改革により欧米型にシフトチェンジをはかろうとしている。小論文や面接なども含めた人間性の評価を強めようとしているのだ。旧来の塾が作る「ひとつのレール」と、人間性を定める「新しいけど曖昧なレール」がぶつかることになる。

 東京大学学生委員会・学生生活調査室の「2014年(第64回)学生生活実態調査の結果報告書」によれば、年収1050万位以上の家庭が35.8%、450万未満の家庭がわずか13.6%と、親の収入が生む学歴格差は年々ひどくなる一方だ。限られたエリート街道を更に強固に作り出す「塾歴社会」、その疲弊構造が見えてくる好著である。
(武田砂鉄)

■武田砂鉄プロフィール
1982年生まれ。ライター/編集。2014年秋、出版社勤務を経てフリーへ。「CINRA.NET」「cakes」「マイナビ」「Yahoo!ニュース個人」などのネットに加え、多くの雑誌でも執筆中。さらに、最近、「文學界」「Quick Japan」「VERY」で連載を開始した。『紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社で、2015年ドゥマゴ文学賞受賞。

最終更新:2017.11.24 09:28

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