昨年3月に出された福島県甲状腺検査評価部会の「中間とりまとめ」でも「甲状腺がん(乳頭がん)は、発見時点での病態が必ずしも生命に影響を与えるものではない(生命予後の良い)がんであることを県民には分かりやすく説明し、その上で検査は強制ではなく、受診者の判断、同意によるものであるが、被ばくという避けられない事実がある以上、不安解消の意味も含め検診を勧めることが望ましい」とがんを過小評価し、その上で検診も自由意志などと、あたかも被曝者の自己責任とも取れる文章が並んでいる。
しかも、である。14年、原子力規制委員会は緊急時迅速放射能影響予測ネットワーク(SPEEDI)を予測が不確かだとして事故時の住民避難に使わないというトンデモ方針を決定した。これまで莫大な予算をかけてきたSPEEDIが福島原発事故で全く活用されなかったことはよく知られたことだが、今度は最初からSPEEDIを活用しないことで被曝の責任を放棄するつもりらしい。結局全国の知事たちからの反発で「自治体の責任」で活用を認めたが、責任逃れに始終する。これが日本政府の実態なのだ。
福島原発事故については、現在でもそして将来にわたっても健康被害を筆頭に様々な問題が噴出するだろう。にもかかわらず、福島県で多発する子どもの甲状腺がんについてここまで取り上げた番組は『報ステ』だけだ。その『報ステ』も今月いっぱいで古舘キャスターの降板が決まっている。
この国の政府とマスコミはこれほどまでに国民をバカにし嘲けり続けている。この実態を知ったうえで、自分たちはなにをすべきなのか。このまま被曝した子どもたちを見捨ててはならない。
(伊勢崎馨)
最終更新:2016.03.13 11:28