福島原発事故は今年で“まだ”5年。チェルノブイリで起こったことが福島事故に当てはまるとするなら、今から数年後に事故当時5歳以下だった子どもの甲状腺がんは増加し、10年以上経って発症するケースすらあるということになる。
実際、福島県で行われた一巡目の検査では、12歳から17歳という年齢に甲状腺がんが多く見つかっているが、二巡目では一巡目にはいなかった6、7歳の子どもの発症が報告されている。しかも一巡目では異常がなかったが二巡目でがんが見つかった子どものなかには、がんが3センチという大きさになっているケースもあったが、これは通常考えられないことだという。さらに、手術した子どもたちのうち、リンパ節に転移したり甲状腺外に出ていたケースは75%に上るという。これに対しても、理由は専門家も明確に説明はできていない。そもそも福島の子どもたちに多く見つかっている子どもの乳頭線甲状腺がんは比較的珍しいがんで、わからないことが多いという。そんな“珍しい”がんが福島県でいま多発している――。
番組では、福島県中通り地方に住み、高校生のときに甲状腺がんと診断された女性が登場した。既に摘出手術を終え首に痛々しい手術痕がある女性は、手術に対する不安、辛かった術後の体調不良、そして首に傷があるため「どうしたの?」と聞かれることを恐れ服で隠していることなど、その心情を赤裸々に吐露している。
「なんで私なんだろう。でも誰かがなんなきゃならないのかな」
女性は治療に専念するため進学した学校を辞めざるを得ず、人生が大きく変わってしまった。それだけでなく再発や転移の不安、そして結婚、出産にも影響があるのではないかという将来の不安も大きい。
なぜ、自分が甲状腺がんになってしまったのか。彼女だけでなく多くの患者や家族が思う疑問だ。しかし事故との関連に対し医師は「原発とは関係ない」という態度に始終したという。被曝の影響はない、と。
これに対しキャスターの古舘伊知郎も「因果関係がわからないなら(「関係がない」という前提ではなく)、関係があるという前提でじっくりと調査、研究する必要がある」と語っていたが、まさにその通りだろう。
しかし、現実の日本で何が行われているか。政府も有識者も、専門家も、そして電力会社も、多発する甲状腺がんと原発事故との因果関係を否定しようと躍起で、がんそのものに対しても「生命には関係ない」と過小評価さえする動きさえ起こっている。