「編集部では、上層部に反発した一部による『新谷さんが戻って来るまでスクープネタは掲載しない。ただし水面下では取材を進め、新谷さんが復帰した後にそれを一気に放出しよう』という空気が流れていました。新谷編集長を休養させた上層部への精一杯の抗議であり、嫌がらせ、意趣返しですね」(同前)
たしかに、新谷編集長が復帰した今年に入ってからのスクープを見ると、タイミング的に不自然なものが多い。甘利前大臣の収賄報道にしても、1月28日号に掲載されたグラビアでは、昨年10月19日には甘利前大臣の公設第一秘書と告発者の間で現金授受の現場を写真に記録していたことがわかる。また、少年Aの記事にしても、昨年9月の段階で少年Aの住居と姿を確認しており、以降、頻繁に転居を繰り返した少年Aをずっと追い続けているのだ。記事にも明記してあるが、所在を把握して以降120日も取材に費やしている。いくら慎重さが求められる少年犯罪の記事だとしても、週刊誌が120日間もひとつのネタを温存し続けるのは異常だ。
しかも、こうしてネタを出し惜しみした結果、大スクープを逃してしまうという痛恨の事態も起こっている。それがSMAPの分裂・独立問題だった。
「じつは、SMAP独立騒動に関しては、『文春』が昨年から先行して取材をしていたといわれています。昨年末には取材もほぼ終了し、ウラ取りも完璧だった。しかし“新谷待ち”で記事を出さなかったため、タイミングを逸して結局『週刊新潮』に抜かれてしまったようです」(週刊誌記者)
事実、「週刊新潮」がSMAPの分裂・独立問題をスクープした翌週の「文春」のグラビアを見ると、昨年12月4日にはSMAPの育ての親で騒動のきっかけとなった飯島三智マネージャーの仕事帰りの姿や、1月3日には飯島マネージャーと香取慎吾が車中で密談している様子、そして1月8日には中居正広の姿をキャッチしている。
「さすがにこれは編集部員も相当悔しい思いをしたようです」(同前)
ともあれ、「文春」のスクープラッシュの真相は、社長に対する“内乱”が理由であり、社会を揺るがしたSMAPのスクープをみすみす取り逃していた。──これには、週刊誌業界からは「雑誌は読者に向けてのものなのにプロ意識がない」「縄張り根性が酷すぎる」などと批判する声も一部にはあるらしいが、このスクープラッシュが意外な副産物を生んだようだ。
結果的に溜め込んでいたスクープを一気に放出したことで、「文春」は世間から一気に注目を集めたが、これにより、いま、編集部にはタレコミが大量に押し寄せているというのだ。
「告発する側もどうせなら話題になってほしいから、勢いのあるところにタレコミは集中するんです。いま、『文春』には、政治や芸能、企業ものまで、スクープラッシュならぬ“告発ラッシュ”で、スタッフは対応に大わらわらしいですよ」(同前)
この調子だと今後もしばらく「文春無双」はつづきそうだ。
(時田章広)
最終更新:2017.11.24 08:30