バーニー・サンダース氏の選挙キャンペーンサイトより
3月1日のスーパーチューズデイを控え、共和党の極右候補、ドナルド・トランプの話題がやたら報じられているアメリカの大統領選挙。たしかに、こんなとんでもない人物が共和党の指名争いで最有力になってきたというのは戦慄すべきことだが、しかし、この大統領選挙では逆に、画期的な現象も起きている。
それは、民主党候補者であるバーニー・サンダース上院議員(74)の躍進だ。当初、アメリカのメディアはサンダースをほとんど泡沫扱いしていたが、いまや大本命のヒラリー・クリントン前国務長官に肉薄する勢いで、勝利の可能性もゼロではなくなってきた。
サンダースが注目されるのは、もともとは民主党とは関係ない無所属議員だったことに加え、自ら堂々と「社会主義者」だと名乗っていることだ。
それがいまでは民主党の大統領候補者になるかもしれないというところまで登りつめているのである。それはいったいぜなのか。
サンダースはユダヤ系ポーランド移民の息子で、シカゴ大学在学中には人種差別反対運動に加わり逮捕されるなど、活動家としても筋金入りだ。卒業後はしばらくイスラエルのキブツで過ごし、大工や映画製作者、作家、研究者などの職を転々とした後、政治家になる。その政治姿勢は一貫して「弱者を守る」というものだ。市長、下院議員を経て2006年に上院議員に当選するが、社会主義者が上院議員になるのは史上初のことだった。
今回の大統領予備選挙でもサンダースは社会主義的政策を強く打ち出している。公立大学の無償化、労働者の最低賃金の倍増、上位1%階層に対する重課税、企業助成政策の廃止、国民皆保険の導入などだ。中間層以下の社会的弱者に対する支援を全面的に打ち出す一方で富裕層の責任強化を強く主張するのが特徴だ。さらに、5年間にわたる計1兆ドルの公共投資を行い、若者を中心に1300万人の雇用をつくりだすとも公約する。
いったいそんなカネがどこから出てくるのかという問いには「(リーマンショックで銀行を救うために投じられた)莫大な血税が返還されれば、財源調達が可能だ」と言い放つ。要するに、金持ちや不道徳な金融機関が貯め込んだ膨大なマネーを取り戻し、労働者や貧困層、若者、マイノリティーに再分配しようという発想だ。