現役時代の華やかな生活から引退後の生活になじめず自殺してしまう選手も多い。先ほどあげた伊良部はその有名な例だ。伊良部は一度目の引退後、アメリカでうどん屋経営などをしていたが、大阪で暴行事件を起こしてしまう。不起訴処分となり、その後もう一度現役復帰するが、すぐに引退。その直後、ロサンゼルス郊外にて飲酒運転容疑で逮捕されるなどトラブルが絶えなかった。そして11年、自宅で首を吊っているのが発見された。自死へいたった理由は明かされておらず、うどん屋の経営失敗や妻子との別居などがその原因として取り沙汰されているが、真相は薮の中だ。
悲しい最期を迎えたプロ野球選手では、チョ・ソンミンも忘れてはならない。ジャイアンツで活躍、オールスターにも出場したが、そのオールスターでの右ひじの故障が選手生命に致命的な傷をつけてしまう。02年に巨人を退団したその後は、安定しない人生を送る。妻への暴行容疑で逮捕、そして離婚。また、仕事もうまく行かず、食品ビジネスに手を出すも失敗。その後は韓国球界でコーチを務めるなどしていたが、13年、首を吊って自殺している。
ヤクルトで活躍した高野光は、飛び降り自殺で命を絶っている。現役引退後は指導者としての道を歩み、オリックス、また、台湾や韓国のチームでコーチを務めていたが、一方、金銭面では厳しかったようで、バブル全盛期に購入した自宅兼賃貸用のマンションを手放すなど資金繰りには苦労していた。死の直前には野球に関わる仕事と出会えず悩んでいたという。
引退後に選手たちを待ち受ける現実はかなり厳しい。NPBが15年に発表したデータによると、14年に引退もしくは戦力外通告を受けた130人のうち、野球に関わる仕事に就いたのは91人、一般企業に就職したのは17人、進路未定者は22人であった。
コーチの職は突然契約が切られてしまうこともあるため安定した仕事ではない。実際、前述の高野はそれを苦に自死へと向かってしまっている。また、解説者の仕事は元から有名選手以外は得ることのできない狭き門だが、地上波からBSやCSにプロ野球中継が移ったいま、ギャラが激減。稼ぐことが難しい商売になってしまった。
15年11月23日に放送された『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日)では、元木大介が「大卒は有利。大学という繋がりで仕事がある」と語り、大学まで進んだ選手は先輩から仕事を紹介されてセカンドキャリアを歩み出すきっかけをつくることができる可能性がある一方、「高卒というのは、本当に仕事が無いです」とも語り、元プロ野球選手のセカンドキャリアの難しさを指摘している。先のNPBのデータで130人中、一般企業に就職したのがたった17人だけであるという数字がそれを物語っている。