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『牡蠣工場』公開直前インタビュー

想田和弘監督が安倍政権を斬る!「安倍さんは民主主義をやめようとしている」「アベノミクスはただの筋肉増強剤」

■誰が「搾取」しているか?という問題は、実はすごく根深い

──グローバリズムの問題でいえば、新作『牡蠣工場』では過疎化が進む岡山県の漁村・牛窓の工場を描いていますね。人手が足らずに中国からの出稼ぎ労働者を受け入れる。言葉にすればシンプルなあらすじですが、内容的には複雑な映画だと感じました。TPPに異議を唱えるつもりでこれを題材に?

想田 いや、それはないですね。僕は観察映画を撮るとき、事前のリサーチも、打ち合わせもしないし、台本も書きません。いきあたりばったりでカメラを回す。それがポリシーです。テレビドキュメンタリーでは散々台本やナレーション案を事前に用意するものをやってきましたが、そうするとどうしても、結論先にありきの「はめ絵」みたいになってしまうので。だから『牡蠣工場』の撮影も、牡蠣を剥く現場を興味深いなと思って撮っていたときに、ふとこう、カレンダーの横を見ると一枚の紙がありました。そこには「11月9日(土) 中国来る」と。中国くるってなんぞや?って思いまして。その後、どうも二人の中国人実習生がやってくるらしいと気がついて、ひとつの物語が立ち上がっていったという感じですね。

──最初『牡蠣工場』というタイトルを聞いたとき、なんとなく語呂から小林多喜二の『蟹工船』を思い浮かべたんですが、単純に「搾取される中国人労働者」という映画ではないですね。

想田 ちまたでは中国人実習生というと、ある意味「搾取の構造がそこにある」という文脈で語られることが多いわけですけれども、少なくとも、この『牡蠣工場』でお邪魔したところに限っていえば、雇い主、受け入れる側も、中国人の人たちがなるべく快適に過ごせるよう、いろんな工夫や努力もされているわけですよ。だから、一般的にレッテル貼りされがちな“鬼の経営者”や“搾取する側の人間”では、実はなかった。むしろ、僕のなかでそういうイメージが裏切られるというか、崩れていきましたね。

──映画のなかでは、後継者不足のなか、東日本大震災のせいで宮城から移住してきた牡蠣漁師の方が、牛窓で牡蠣工場を継ぐことが判明しますよね。これも、現場で撮りはじめてから知ったことなんですか?

想田 そうですよ。実はそのときに、僕自身も編集中に衝撃的なことに気がついた部分がある。映画のなかで、普段サラリーマンをされている牡蠣工場の親方の息子さんが出てこられて、僕がカジュアルに「この工場を継ごうと考えたことはなかったんですか?」って聞きますよね。そのときに「いや、ないです」っておっしゃる。そう言われたときに、僕は一瞬「なんで継がないの?」って思っちゃった。でも、後ですごく反省して。なぜかというと、僕自身もそうだったな、ということに気づいちゃったからです。実は、僕の親父は栃木県でスカーフとかマフラーを製造する小さな会社をやってる。僕は三人きょうだいの長男ですが、親父の会社を、僕もきょうだいも当然のように継がない。だから、このままだと親父が引退すれば会社は終わり。

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