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海外挑戦の五郎丸選手を自民党に続いて右派勢力が政治利用の動き! でも本人は偏狭なナショナリズム克服を表明

〈タテに繋がる親子の関係で結婚を考えている日本人がいた! とは新鮮な驚きである。
 普通の人は個人主義で考えるので、その時は家族主義が消えている。家族の情愛の世界という幸福はもう日本から消えたかと思ったが、五郎丸には生きていた。日本の伝統は今も続いているのである。〉
〈よい手本は五郎丸。日本男子は早く結婚して男らしい自分を子供に見せるのが大事で、それが日本の深い心の継承になるのである。
 日本万歳!〉

 正直、これを読んだときは、笑ってしまった。だって、子どもに活躍しているところを見せたいなんていうのは、日本のプロ野球選手はもちろんメジャーリーグのアメリカ人選手、あるいは欧州のサッカーリーグで活躍しているブラジル人選手だってインタビューでよく言っている話。それを「日本の伝統」とか「タテにつなかる親子関係」とかいうのは、こじつけにもほどがあるだろう。あげくは「日本万歳!」って……。

 しかし、日下にいわせると五郎丸の存在とともに一躍ブームになった「五郎丸ポーズ」も“日本人の心”がつくりだしたものだという。

〈(キックの際の表情は)最初は緊張感を高めて、しかも統一を維持する表情だが、指を組んでボールを見上げるところからフッと緊張が解けて柔和な別の顔になり、いよいよキックする時はほとんど放心状態の顔になる。無の境地というべきかどうか知らないが、「ああ、これが日本人の心だ」と気がついた…〉

 日下は、「無の境地」が日本の専売特許だとでも思っているのだろうか。「無」という考え方は、原始仏教の「諸法無我」、荘子の「心斎」など、インドや中国にも古くからあるし、さらにいえば、寸分たがわぬルーティンを繰り返すことで集中力を高める方法はアメリカで流行りのコーチングで、かなり前から取り入れられている方法だ。

 ようするに、この保守じいさんは、まず結論ありきで、今、脚光を浴びているスポーツ選手を「典型的な日本人の魂をもっている」ということにして、後付けでそれにあてはまりそうなディテールを無理矢理探し出しているだけなのだ。

 そのやり口は保守というより、ほとんどネトウヨ。安倍応援団の底の浅さが知れるが、しかし、この調子だと、そのうちこの極右雑誌に「五郎丸が語る日本人の誇り」なんていうインタビューが掲載され、五郎丸はネトウヨ思想の宣伝隊長にされてしまうんじゃ……。

 だが、実際はそんな心配はなさそうだ。というのも、五郎丸自身はむしろ、こういう偏狭なナショナリズムを否定し、乗り越えようとしているからだ。

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