〈まず歌詞がスケベですよね。「あそこの森の」っていうのがもうダメです(笑)〉
〈「僕はただ見ている」というサビなんですけど、なんて言うか、イメージとしては上に乗ってくれている時の女の子を見ているみたいなイメージです〉
アメリカのソウルやR&Bなどの歌詞は、うっとりするようなその音楽とは裏腹に、実はよく聴いてみると露骨にセックスのことを歌っていたりして、日本人が歌詞の対訳を読むと途端に笑うしかなくなってしまうようなことが多い。そこで星野は、本場のブラックミュージックと同じく歌の内容はセックスに関することなのだけれども、アメリカの様式をそのまま直輸入するのではなく、日本人の美意識にも合うように隠喩のかたちで文学的に書いてみたのだと言う。
〈なんて言うか官能的な日本文学ってあるじゃないですか。あの感じをちょっとディスコクラシックというか、ソウルミュージックとかけ合わせてみたいなと〉
〈やっぱりブラック的なスケベとジャパニーズスケベっていうのはまたぜんぜん違うんですよね。やっぱり俺たちがグッと来るのはジャパニーズスケベなのではないかなと〉
前述の「あそこの森」や「僕はただ見ている」の他にも、この曲には「花びらに変わる 君をただ見つめているよ」「君もその他も 胸を開け 足を開け 踊るならば」といった歌詞もある。これなども、おそらくセックスに関するメタファーなのだろう。言われてみればなるほどと思うが、言われなければこのメタファーには誰も気づかない。同曲をうっとりと聴いていた女子からすると驚くばかりの発言である。
しかし、そのようにセックスのメタファーが織り込まれた曲は「桜の森」だけではない。同じく最新アルバムに収録されている「Snow Men」に関してはこんな解説をしているのである。
〈歌詞も「君の中を泳ぎながら」という、まさにこう、女の子の上を泳いでいるようなイメージから始まり、「山上を越えた」って。山上はおっぱいですよね。やっぱり。で、夕方の、カーテンが開いていて夕日が差し込んでいる中でセックスしているみたいなイメージだったんですよ〉
〈で、「胸に降り積もる光」っていうのはおっぱいに出した時のイメージですね〉
〈「君が振り返る時は ただ羽を広げさよなら」っていうのは、イッてしまった後の賢者感のもう早くさよならしたいっていう、あの男の最低な部分。あのどうしようもない感じの〉
ようは「Snow Men」というタイトルも、レイモンド・ブリッグズのあの有名な絵本のキャラのことを指しているのと同時に、精液のメタファーでもあったのである。しかも、セックスした後はもうさよならしたいという、あまりにも最低過ぎる発言。ファンのサブカル女子に軽蔑されてもおかしくない告白だ。