TBS番組サイト「年末ドラマスペシャル『赤めだか』より
「時代が古典(落語)に合わなくなっていて、“天才”から“奇才”になってた。ものすごい人なのに、“立川談志をやらせてくれる時代”じゃなかった」
訃報に際し、ビートたけしが思わず故人の悔しさを代弁したのが、落語界の異端児と称された立川談志である。亡くなってから4年が過ぎた今でも、名演を収めたDVDが次々と発売されて、ストイックなまでに落語に向き合い、古典落語に新たな価値を付け新しいものに作り上げた姿勢が改めて評価されている。
本日12月28日には、弟子から見た談志の素顔を描いたドラマ『赤めだか』(TBS系)が放送される。談志をたけし、弟子の談春を嵐の二宮和也が演じる豪華なキャスティングでも話題を集めている。しかしやはり驚くべきは、談志の破天荒なエピソードの数々だろう。一般的に知られている談志のエピソードといえば、参議院選に当選し、沖縄開発政務次官となった1975年に2日酔いのまま記者会見に臨んだことや、落語協会脱退騒動が記憶に残っている人も多いはず。しかし、ドラマの原作である立川談春のエッセイ集『赤めだか』(扶桑社)には、己の信念を貫く厳しさを持ちつつ、人間味があり、時にお茶目という、談志の素顔が浮かび上がってくる。
例えば、当時高校生だった談春が弟子入りを志願し、初めて談志の自宅に行った時のこと。落語家になることを両親に反対された談春は、住み込みで新聞配達をしながら談志の家に通う覚悟を伝えると、その心意気に談志は感動。その場で「カレーの作り方を教えてやろう」とキッチンに連れていかれる。
残り物のシチューをカレーに作り変えるのだが、談志はスパイスのほかに、冷蔵庫にあったチーズケーキ、納豆のタレ、ソース、黒豆のつゆ、オイスターソースなどを次々と放り込む。出来上がったカレーを恐る恐る食べると、意外にも美味。すると談志は、「カレーってのはそういうもんだ。(略)下らねェ海老だの肉だのいれることァねェんだ。坊や、よく覚えとけ、世の中のもの全て人間が作ったんだ。人間が作った世の中、人間にこわせないものはないんだ」と諭す。カレーを作る際に、無意識に型どおりの手順・材料を使う人が多い中、奇才は何気ない行動に疑問を持ち、「自分」を入れることを惜しまない。これが談志の日常なのである。