「創」(創出版)2015年12月号
先日、アダルトビデオへの出演を拒否した女性が、所属プロダクションから2400万円もの違約金を請求された裁判が話題となった。
この騒動は、2011年、当時高校生だった彼女がタレントとして芸能プロダクションにスカウトされ「営業委託契約」を締結。そして、過激なイメージDVDへの出演を強要されたことに端を発している。この時、撮影内容を知った彼女は「仕事を辞めさせてほしい」と相談。しかし、出演を取りやめると違約金が発生すると脅され、しぶしぶ出演することになったという。
そして、20歳になった時、今度はAVへの出演を強要される。その申し出を断ると、事務所サイドが出してきたのはまたもや違約金の話であった。女性は泣く泣く1本のみ出演。その後、契約解除を申し立てたところ、事務所は「残り9本の出演契約がある」と主張した。そこで、本稿冒頭にあげた違約金2400万円の裁判へと発展していったという。結果としてその請求は東京地裁によって棄却されたわけだが、なんとも酷い話である。
2010年代となった今でもなお、こんな人身売買のようなやり取りが行われているのかと驚くばかりの本事例であるが、女性の支援団体「PAPS(ポルノ被害と性暴力を考える会)」の調査によると、なんと、このような被害が現在増えているらしい。13年は1件だった相談件数も、14年は32件、15年には59件にもおよんだ。このうち半数がAV出演をめぐるトラブルの相談なのだという。
なぜこのようなケースが激増しているのか? 『封印されたアダルトビデオ』(彩図社)などの著書をもつ、ライターの井川楊枝氏は「創」(創出版)15年12月号で、その原因について〈AVの地位の向上こそが、トラブルの源となっていた〉と綴っている。
近年、AV女優たちのタレント化が著しい。中国版ツイッターとも呼ばれる「微博」でフォロワーが1600万人以上もいる蒼井そらを始め、その蒼井も所属していたAV女優やグラビアアイドルをミックスさせたアイドルグループ「恵比寿マスカッツ」(最近、メンバーを刷新した第二世代「恵比寿★マスカッツ」が結成されたばかり)の活躍など、昨今はAV女優が表舞台に立つことが多い。「AV女優」には新たに「セクシーアイドル」「セクシー女優」という呼び名がつき、地上派のバラエティ番組に出演するのも珍しいことではなくなった。