封印された映像のなかにはこんな例もある。1997年、『ポケットモンスター』(テレビ東京系)を見ていた子どもたち約700人(そのうち約100人は入院)が点滅映像を見たため病院に運ばれた事件、いわゆる「ポケモンショック」騒動を覚えている方も多いだろう。実は、この騒動に先駆けて同様の問題を起こしている作品が存在する。『YAT安心! 宇宙旅行』(NHK)というアニメだ。「ポケモンショック」事件が起きる約8カ月前の3月29日、『YAT安心! 宇宙旅行』の放送を見ていた子どもたち20人以上が病院へ運ばれた。原因は、ポケモン同様、作中に登場する数秒間の点滅映像である。しかし、NHKはこの時点ではしっかりとした調査を行っておらず、映像と事件の関連性も不透明なままであった。そんな折に「ポケモンショック」騒動が発生。NHKはようやく「アニメーション問題等検討プロジェクト」を立ち上げ、『YAT安心! 宇宙旅行』の点滅映像の危険性を認識することになる。これにより、件の作品のビデオは回収。該当部分を静止画に差し替えたうえで各販売店に返却している。『YAT安心! 宇宙旅行』放送時点でしっかりとした検証が行われていれば、「ポケモンショック」は起きなかったかもしれない。
「問題映像」となるパターンで最も多いのは「差別語」の使用にまつわるもの。放映当時は問題なかったものの、時代の変化により現在ではソフト化の際に修正されたり、もしくはソフト化自体が不可能となっているものが多く存在する。例えば、『マグマ大使』(フジテレビ系)の第21話「細菌を追え!!」には「つんぼ」「おし」「めくら」と書かれたカードを首から下げている男が登場。現在発売されているDVDにはボカシが入っている。また、ドラマ版『子連れ狼』(日本テレビ系)の第2話「乞胸お雪」は、タイトルにもある「乞胸」(江戸時代に大道芸で生計を立てていた被差別民たちを指す言葉)が問題となり、再放送の際も、ソフト化される際も、この回はなかったものとされ、第3話「鳥に翼 獣に牙」を第2話に繰り上げるという措置が取られている。
ただ、「言葉」の問題は、何も差別用語に限った話ではない。井筒和幸監督の映画『ガキ帝国 悪たれ戦争』は、ある固有名詞が問題となった。作中、主人公たちがアルバイトしている「モスバーガー」に嫌気が差し、「この店のハンバーガーは猫の肉や!」と叫びながら店のガラスを破壊するシーンにモスバーガー側が激怒。製作サイドに猛抗議のうえ、上映は中止され、ソフト化も不可能となった。