〈籾井氏は物事を徹底して敵味方で考えるタイプでもあり、政党でいうなら、自民党は味方で民主党は敵。新聞なら産経、読売は味方で、朝日、毎日、東京は敵という感覚です。そして自分が「敵」だと思った相手は、どんな正しいことを言おうと、「あいつはおれの敵だから言っているのだ」という論法で全否定します。〉(前掲書より)
籾井会長を経営委員として傍から見てきた上村教授によるこうした証言を踏まえると、やはり、籾井会長から見れば、“味方”である官邸に頭を下げさせた『クロ現』と国谷キャスターは、まぎれもなく“敵”であろう。“やらせ問題”にたいするBPOの報告を機に、いっきに始末してしまおうというのもうなずける話だ。
上村教授は前述の「週刊朝日」の記事のなかで、籾井会長と安倍政権の共通項は「反知性主義」だとして、こう述べている。
「安倍政権は、いったん権力を握れば、何でもできると思ってしまっているのではないか。権力をチェックし、けん制する機能が必要だということが、理解できていない。自分と考え方が違えば『左翼だ』とレッテルを貼って、排除してしまう。法やルールをベースにものを考えられるセンスのある人がいない。籾井会長の特徴は、そのまま安倍政権にも当てはまるのです」(「週刊朝日」より)
NHKが“安倍チャンネル”と揶揄されて久しいが、それは、単に政権寄りの放送を繰り返しているということだけでなく、籾井会長と安倍政権の性格的相似性に起因しているのかもしれない。
そして、まさに安倍首相をバックにつけた籾井会長の“恐怖支配”によって、NHKは報道機関どころか、放送局としての倫理さえ失ってしまった。国民が自分たちの手に公共放送を取り戻すためには、もはや安倍政権を倒すしか方法は残されていない。
(小杉みすず)
最終更新:2015.11.19 06:55