それに、名称が表しているように「選択的夫婦別姓」とは、「どちらを選ぶこともできる」という選択肢を増やすだけの話である。家族は同姓でいたいという人はそれを選べばいいわけで、逆に結婚相手と同姓にすることに不便を感じたり、抵抗がある人に選択する自由がひとつ生まれるだけだ。
だが、問題は安倍政権の姿勢だ。内閣でも、女性活躍担当である加藤勝信・一億総活躍担当相をはじめ、岩城光英法相、高市早苗総務相、丸川珠代環境相など、ほとんどが選択的夫婦別姓には反対の姿勢を示している。
しかも、その急先鋒は安倍首相だ。そもそも、この選択的夫婦別姓はいまから遡ること約20年前、1996年に法制審議会が導入を答弁したが、98年に国会に提出されると自民党が反発して廃案に。その後、2002年にも法改正が議論されたが、このときも自民党議員が強い反対を行った。じつはその議員というのが、安倍晋三その人だった。
14年4月3日に国会で行われた青少年問題に関する特別委員会では、民主党の菊田真紀子議員が、国連女性差別撤廃委員会から選択的夫婦別姓導入などを速やかに実施するように長期にわたって勧告を受けてきたことなどを挙げ、こう述べている。
「2002年、選択的夫婦別姓が議論された際に反対の急先鋒だったのが、安倍総理でありました」
さらに、2010年には鳩山内閣が選択的夫婦別姓の導入を目指したが、このときも安倍氏は反対の立場を取り、自身が会長を務める「創生「日本」」でも法改正を猛批判している。
こうした姿勢は、言わずもがな安倍首相と密着関係にある右派団体「神道政治連盟」や「日本会議」と共鳴し合うものだ。夫婦同姓は日本の伝統だ、選択的夫婦別姓によって家族の絆はボロボロにされ、ゆきすぎた個人主義によって家族は崩壊してしまう──。彼らはそう主張して選択的夫婦別姓を批判するが、夫婦同姓はたかだか明治以降のことで伝統というほど古くもないし、あとはイノッチの言うとおり「同じ苗字だからって一体感が生まれるわけじゃないでしょ?」と反論できてしまうような話だ。