もっとも、福島原発事故を機に、こうした電力会社や原子力団体の広告バラマキも厳しい追及を受け、規模はかなり縮小されていた。タレントや評論家も事故の際に「原発の安全神話をつくりだしてきた共犯者」と厳しい糾弾を受けたため、原発広告への出演を控えるようになっていた。
しかし、安倍政権による原発再稼働政策とともに、それが今、復活気配にあるのだ。
日経広告研究所が毎年発行している『有力企業の広告宣伝費』の13年度版と14年度版を見比べると、例えば東京電力の宣伝広告費は16億9800万円から30億1000万円へと倍増。東北電力も36億7800万から40億5100万円と増加している。これは11年度以降初めての傾向だ。そして、業界団体である電事連や、本稿で取り上げているNUMOなど、関連団体の広告予算は公表されていないが、かなりの水準で上昇していると言われている。
また、昨年には、博報堂とアサツーディ・ケイという大手広告代理店が日本原子力産業協会に加盟し、以前から加盟していた電通をふくめて、国内トップ3が原子力ムラのスクラムにがっちりと組み込まれる体制となった。
そして、タレントや評論家に対しても、露骨な原発推進広告ではなく、出演を応諾しやすい電力全般や関連団体の広告、PRを依頼することで、取り込みを再開している。
つまり、今回、NUMOのパブ記事にタレントや有識者を数多く起用した背景にも、原子力ムラのそうした意図があるのではないかと推察されるのだ。「原発の是非とは関係はない」というフレコミで「高レベル放射性廃棄物等の最終処分選定の議論を」と近づき、金漬けにして、最終的には原発応援団に仕立てていく、そういう作戦ではないのか。
実際、その人選を見ると、朝日新聞で特定秘密保護法に反対しながら、読売新聞で原発再稼働を容認した春香クリスティーンなど、中立派を狙い撃ちしているように思える。
いずれにしても、高レベル放射性廃棄物をどうするかという課題は、けっして、産経グループのメディアで彼らが一斉に喧伝するような「再稼働とは別の問題」ではない。少なくともNUMOは新たに生み出される“核のゴミ”を前提にしているはずだ。それは同時に、脱原発派を抑え込むという自民党の選挙対策、マスメディア対策を兼ねている。
春香クリスティーンらこのパブ記事の出演者がそれでも、再稼働とは別だというなら、ぜひNUMOから金を貰っていない場所で議論してもらいたいものである。
(梶田陽介)
最終更新:2015.11.05 04:15