このような自主規制が行われているのには理由がある。100年近くの歴史を刻んだ飛田という街だが、時代の流れ・周辺事情の激変には抗えない。特に、飛田がある西成区のすぐ隣、阿倍野区では再開発が盛んだ。東京スカイツリー、東京タワーに次ぐ国内3位の高さを誇る超高層ビル・あべのハルカス、大型ショッピングモール・あべのキューズモール、そしてそれらのまわりに次々とタワーマンションが建設されている。これまでの住民とは違う、新たなファミリー層が大量に流入してきた。もしもこれらの人々から街の存在に対しての批判が起きれば、飛田の存在そのものが危うくなりかねない。
〈そこで最近では、「明るく安全な街づくり」を目指してさまざまな取り組みに励んでいます。月に2回、飛田新地料理組合の組合有志、料亭関係者で集まり街の清掃をしていますし、景観をよくするために街全体の照明を明るくしました。風情ある街並みを残していくために道路に敷いているタイルを明治時代風のロマンチックな色使いに変更し、2年ほど前には、1500万円近いお金をかけて老朽化していた公衆トイレをモダンなデザインのものに建て直しもしました。これらはすべて、組合員から集めた月1万7000円の組合費でまかなったものです〉
どんなに隆盛を誇った街も、時代が変われば何らかのかたちで変化していかなくてはならない。著者の杉坂氏もこう語る。
〈周辺事情の変化をただ見守っているだけでは、いずれ一掃されてしまう日がくるに違いありません。飛田も変わらなければならないのです〉
この先、飛田新地という街はどのように変わっていくのだろうか。
(田中 教)
最終更新:2018.10.18 05:01