ようは、公安調査庁が素人に近い情報屋を使った結果、ヘマをやらかしてしまったということらしい。同庁の海外諜報活動がずさんであることは、外務省関係者も認めるところだ。
「そもそも、公安庁は破壊防止活動法にともなって立ち上がった役所で、主な監視対象は、共産党、新左翼過激派、オウム真理教など。海外での情報収集は本来の任務ではない。だから、当然、専門的な訓練もしていないし、まともな海外諜報活動ができるはずがない。これまでも、公安庁からめぼしい中国情報がもたらされたなんていう話は聞いたことがないね。今回も外務省幹部は具体的な動きをまったく知らなかったようで『素人が勝手に何をやってるんだ!』とカンカンでしたよ」
ではいったいなぜ、そんな役所がわざわざ中国の情報収集を情報屋に依頼し、巨額の金を払っていたのか。その背後にはやはり、安倍政権が支配する空気があるという。
「官邸があそこまで露骨に中国を仮想敵国と捉えていると、官僚はやっぱり敏感にそれを察知して動くんですよ。実際、最近は公安庁に限らず霞が関全体が『とにかく中国の情報をとれ!』『なんでもいいから中国情報を上にあげろ』という空気になっている。とくに公安庁は、公安畑の中でもリストラ対象と言われている役所ですから、なんとか点数稼ぎをしたいと、必死で専門外の中国情報を集めようとしたんでしょう」(外務省関係者)
だが、マスコミは一切指摘しないが、今回の公安庁の失態によって、さらにややこしい事態が起きつつある。前出の外務省関係者が指摘する。
「拘束された日本人はスパイ容疑を認めてしまっているんだ。これは情報の世界ではありえない。訓練されたスパイなら、絶対、認めない。認めないから『無実の日本人を解放しろ』と政府も要求できる。それが、認められてしまっては手の出しようがない」
インテリジェンスのなんたるかも分からないこの役所のせいで、日中外交の火種を与えてしまい、危機管理どころか、10月下旬にも予定される日中韓首脳会談をめぐって中国側に取引カードを与える結果になってしまったのだ。