もっとも、メディアでもネットでもこのテの主張を口にする連中はけっして少なくない。芸能人では「安保法制に反対するのは平和ボケ」と発言した松本人志もそうだが、「俺は現実がわかってる冷静な頭のいい人間だ」ということをアピールしたい人間は往々にしてたいした知識もないままにこういう“踊らされた現実主義”的な言説を口にする。
ただ、中丸の場合は松本人志らとはまったく動機がちがうかもしれない。中丸の所属するKAT-TUNはアイドルグループとしては完全に頭打ち。同じ日本テレビの番組でスポーツキャスターをやっている亀梨和也はじめ、メンバーはアイドルとはちがうかたちでの生き残りに必死だ。そのなかで、前述したようにインテリ志向の強い中丸は、ニュース、情報系番組の司会者を狙っている。
だが、ジャニーズのタレントをキャスターとして起用してくれるのは、今のところ、日本テレビのみ。だから、中丸クンとしては日本テレビに気に入られたいと必死なのだろう。たしかに、中丸の今回のコメントを改めてチェックしてみると、まさに日本テレビが言ってほしいことをテレビコードぎりぎりで語っていることがよくわかる。
こういうかたちで空気におもねり、強いものにしっぽをふるタレントキャスターがどんどん増えているんだろうなと想像すると、暗澹とした気分になるが、逆に改めて「エライ!」と思うのが、ジャニーズの先輩、中居正広や坂上忍だろう。
彼らは日本テレビと同じように、完全に安倍政権べったりのフジテレビの番組で堂々と安保法制反対を語った。しかも、その言葉は彼らのなかのリアリティが伝わって来る説得力のある言葉で、中丸のようないかにも「メディアの空気を小器用にまとめてみました」的なものとはまったくちがっていた。
まあ、芸能界におけるポジションがちがうから、そこまでのことを中丸クンに望むつもりはないが、テレビというのは小器用にばかりふるまっていても、そのうち使い捨てにされるだけだよ、とアドバイスをしておこう。
(井川健二)
最終更新:2015.09.23 10:11