暴力により“強行採決”を仕組んだのは自民党側だということは、誰の目からみても明らかだろう。
それどころか、特別委員会でのバリケート採決、暴力沙汰による委員会採決は自民党が事前に綿密に計画し、さらに安倍首相自身からの指示さえ存在したものだった。
9月20日付の安倍首相親衛メディア「読売新聞」には、18日の委員会について「採決 スクラム戦術」と自民党の作戦勝ちを誇るような記事が掲載されているが、その中にこんな記述がある。
「この日早朝与党の特別委メンバーらは委員会室に集まり、綿密な打ち合わせを行っていた。自衛隊出身の佐藤氏(正久・与党筆頭理事)が、防衛大学校の開校祭のメインイベント「棒倒し」から着想した隊形で委員長を守ることを指示した。安倍首相は参議院議員の世耕弘成官房副長官に、「委員長を孤立させたらダメだ。野党の暴力にひるんではだめだ」と指示していた」
舞台裏や、佐藤議員の武勇伝を紹介しようとした記事なのだが、何のことはない、自民そして安倍首相自身が暴力を率先して誘発させ、先制攻撃を指示していたことを明らかにしてしまったのだ。
しかも、である。今回の安倍政権による集団的自衛権、安保法制はある意味クーデターとも言える事態だ。安倍首相は総理に就任して以降、公共放送NHKの会長に子飼いの籾井勝人をすえ大本営化し、他大手マスコミに恫喝とお友達懐柔でプロパガンダ機関とすることに成功させた。さらに内閣法制局トップや日銀総裁までも“お友達”を送り込み、首をすげ替えた。もちろん官邸、閣僚も自分の意のままになる親衛隊たちだ。
こうして周りを固め、独裁態勢を構築した末に、一方的な解釈改憲によって集団的自衛権を閣議決定し、安保法案を成立させたのだ。これはまさしく独裁的手法でありクーデターといえる事態だ。
にもかかわらず、すっかり統制されコントロールされた大手マスコミは、自民党、安倍政権の暴挙を野党の責任にすり替え矮小化するのに必至だ。
9月19日は「自民党が死んだ日」であるとともに「マスコミが死んだ日」になったのかもしれない。
(伊勢崎馨)
最終更新:2015.09.22 10:38