中居といえば、SMAPブレイク前からグループ内でMCの役割を担い、その腕を磨いてきたが、本書によると、中居は30歳で「やっぱMCだな」と再確認、そのとき中居はこんな決意を秘めていたという。
〈そのとき、「三十代は一回ファンに嫌われなければいけない」と決意した。なぜか。バラエティ番組のMCとなれば、恋愛や結婚の話、あるいは下ネタになることもある。その際、MCである自分がそういう話をまったくしないのは卑怯だと感じたからである〉
そして40歳を目前にしたときには、ラジオでこうも語っているという。
「SMAPのなかでいちばんおしゃべりができるようになる、ジャニーズのなかでいちばんおしゃべりができるようになる、芸能界でジャニーズなのにおしゃべりがいちばんできるようになる」
司会者を志すなら、ファンに嫌われる覚悟が必要。これらの発言からは、軽妙なMCとは裏腹に、腹を括り、深い信念をもって挑んでいることがわかる。
また、著者の太田氏は、中居のMCにタモリとの類似性を挙げる。それは、こんな中居の発言に顕著なのだという。
「感情を安定させていたい。それは喜怒哀楽を出さないとか感情を押し殺すとかいう意味ではなくて、いつでも相手の言葉を引き出したり、人の気持ちを受け入れたりできるということ」(「AERA」2013年9月16日号インタビューより)
タモリのMC術は、場を仕切るのではなく〈出演者たちが作るその場の流れを感じ取り、それにうまく身を委ねる〉点にある。この〈仕切らない仕切り〉で重要になってくるのが、出演者をよく観察すること。じつは中居も、〈プライベートでごはんを食べに行くときでもだいたい端に席を取る。人を背にするのがイヤなので、壁があれば壁を背にする。SMAPのトークのときも、自分が仕切るときは四人が見えるように端に行く〉といったように、〈相手の言葉や気持ちをしっかり引き出す〉ための言動を心がけているのだ。