しかし、問題はこのあと。伊藤アナは過去にも安保の議論のたびにデモが起こってきたことを紹介し、こう話しはじめたのだ。
「こういう法案にこういうこと(デモ)が起きるというところ、田崎さんはこういう指摘です。(フリップボードの紙をめくり)“安全保障”がテーマになると、これに違和感をもつ国民が多いんではないかという」
そして、フリップボードには田崎氏の指摘だという「“安全保障”に違和感」という文言が現れ、田崎氏はスラスラと持論を展開した。これが何を意味するかというと、事前に番組側は田崎氏と打ち合わせを行い、その意見を進行用のフリップボードに落としこんでいた、ということだ。
たしかにテレビ番組の制作では、そういうことはよくある。だが問題は、対する奥田氏は、その内容を知らされていなかったという事実だろう。彼のTwitterにはこんな投稿がある。
〈ていうかフリップの中身知らなかったのが痛かった。なんかおかしいと思ったけど。あーいうものなんかな。〉
田崎氏とはフリップをつくるくらいにたっぷり打ち合わせをする一方で、奥田氏には中身を一切教えずぶっつけ本番で反論させる。これではまったくフェアじゃないし、端的に言ってズルすぎる。
そんなアンフェアな状況で、それでも奥田氏は孤軍奮闘する。なかでも、伊藤アナが“デモより国政選挙による意思表示のほうがより直接的では?”と投げかけ、過去3回の選挙で自民党が圧勝していると強調、そこに田崎氏が乗っかって「とりわけ重要なのは昨年暮れの衆院選挙で、(自民党は)比例代表で1765万票とっているんですね。これ、集団的自衛権の行使にかんする憲法解釈の変更の閣議決定は、去年の7月1日に行っているんです。それを前提にして、みなさん投票しているわけですね」と畳みかけてきた際には、奥田氏は毅然とこう反駁した。
「前回の選挙はアベノミクス選挙と言われて、アベノミクスが争点だと首相自身が言っていたと。で、そういったなかで最低の投票率だったわけじゃないですか。ほんとうに、なんで前回の選挙のときに集団的自衛権や……集団的自衛権だけじゃないですよね、今回の11法案、すべての内容にかんして、(選挙の)争点になっていましたか? こんなことみなさん、っていうかテレビでも取り上げていましたか? 選挙のときに」
これは多くの国民が不信感を抱いている大きな問題であり、ごく当然の反論だ。だが、奥田氏がそう話すと、すかさず田崎氏が「相当、取り上げていましたよ」と口を挟んだ。