とはいえ、これらはただの憶測、確証バイアスにすぎず、さすがに出来レースはないだろうと筆者も当初は思っていた。しかし、今回、発表された経緯を見ていると、あまりに不公平で、佐野研二郎というデザイナーを選ぶためのコンペだったとしか思えないのだ。
しかも、今回、組織委は「商標と類似点があったためデザインを修正してもらった」としながら、実際はそれだけが理由ではなく、1回目の佐野氏の修正案を「躍動感がない」としてさらに最終案に修正させている。つまり、最終デザインは佐野氏と組織委サイドの合作とも言えるかたちで進んでいるのだ。
審査委員長の永井氏はインタビューで「大会組織委員会の依頼で何度か施した。審査委員に修正過程は伝わっていない」と答えていたが、デザインの専門家ではない組織委に「躍動感がない」などの修正指示が可能なのだろうか。もしかしたら、佐野氏は最終案をサジェスチョンした別の誰かをかばっているのではないか、そういう疑念も頭をもたげてくる。
いずれにしても、東京五輪をめぐる疑惑は解明されたとはまったく言いがたい。佐野と大会組織委は自分たちに都合のいい情報を小出しに出すのでなく、審査や修正の過程をあらいざらい公開するべきではないだろうか。
(田部祥太)
最終更新:2015.08.31 12:08