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タメ口にキレた又吉直樹にもその片鱗が? 売れっ子作家たちのわがままと変人ぶりを元編集者が告発!

 しかも山村は「独自の感情の揺れ動き」をする、まさしく“女帝”ゆえ、接する編集者は常にピリピリと神経を尖らせ、気配りしなくてはならない。儀式のためのパーティでも大手出版各社の幹事たちが準備に神経を尖らせ奔走した。本書では1994年の新年会の様子がこう描かれている。

「幹事と働き手の編集者たちは午後二時に会場の京都グランドホテルに集合する。会場点検、部署確認、商品整理をする。総合司会は、講談社の中澤義彦である。司会者はパーティの後の『反省会』で発言や進行具合などで山村の叱責を受けることがあるため、相当の緊張を強いられる役割である」

 山村の逆鱗のツボはどこにあるか分からない。校條も文芸誌の表紙に山村の名前と作品を別格で扱わず、大目玉を食ったこともあったという。

「山村美紗と西村京太郎の京都時代を支えた編集者たちは、確かに嫌な思いをしたり、プライドを傷つけられたりしながらも、女帝の足下にひれ伏した」

 忠誠心といえばバイオレンス・アクションの西村寿行も編集者を翻弄し、しかもそこに“酒”が加わり破天荒さに拍車をかけた。

 毎晩6時半か7時には西村の仕事場に編集者たちが集まり始め酒宴が始まる。多いときで10人近くの編集者が集まったという。だがそれは決して楽しいだけの酒宴ではなかった。

「夜の九時頃にもなると西村の声も大きくなり、それに連れて感情の起伏が激しくなる。編集者の一言がきっかけとなり、激論を招くこともしょっちゅうだった。あげくは、目のまえの編集者を「おまえはクズだ」と決めつける」

「クズ」を激しく罵るのは西村流であり、時には編集者に対しナイフで斬りつけようとしたことさえあったという。また逆に褒める時も「最高だ」と激しく褒めるが、しかしその評価は日々コロコロ変わった。編集者を振り回して、右往左往させるのだ。その理由を校條はこう分析をしている。

「恐らく、編集者は、犬と同じだったのだ。犬と同列に並べられたら、編集者たちは怒るかもしれないが、西村が一番愛していたのは犬と名づけられた生き物である」

 西村は晩年は病気などで執筆意欲が遠のき、同時に編集者も離れていき、最後に西村の死を看取ったのは1匹の紀州犬たった。それほど“究極的に忠実な”犬を愛したというが、西村は編集者を“忠実な犬”であり、編集者たちの忠誠心を試し、自分という作家にこそ尽くすべきだという屈折した願望を感じずにはいられない作家だった。

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