「原発は安全」「地球に優しいクリーンエネルギー」「他電力に比べコストも格安」といった“安全神話”というデマをまき散らし、国民を欺き続けてきた。そして電力会社と一体になってメディアや世論をコントロールしてきたのがエネ庁だった。
そんなエネ庁にいまさら「正しい知識」「新しい知識」などあるはずがない。もしあるとすればそれは「さらに国民を欺く新手の詐欺手法」だけだ。
例えばエネ庁は05年以降、玄海原発や浜岡原発など複数の住民シンポジウムにおいて「やらせ」事件の片棒を担いでいる。シンポジウムに“仕込み出席者”を調達し原発推進に都合のいい質問をさせたのだ。その後「やらせ」が発覚し大きな批判を浴びた結果、第三者委員会が設立されエネ庁の幹部6人が処分されるという大不祥事を巻き起こしている。
本当に「正しい知識」を持ってそれを国民に発信するつもりなら、そもそもこんな「やらせ」をする必要などなかったはずだ。
姑息な世論誘導はまだある。事故前のエネ庁の広告はなぜか「オレンジページ」(オレンジページ)や「ジュニアアエラ」(朝日新聞出版)といった女性や育児を対象としたメディアや子ども向けのパンフレットに大量に出稿されていた。これについて経済産業省は2010年に行われた事業仕分けの際、こんな発言をしているのだ。
「原子力に関する関心が相対的に低い傾向が見られる女性層」「男性に比べて女性の方が原子力の必要性に対する認識が低い」
理解が足らない女性層に対する広報が必要という女性蔑視とも思える姿勢だが、子どもに対しても同様で、文部科学省と連携し原発の理解と推進を小学生から啓蒙することを画策。教員向けには副読本まで作成し、勉強会を開催していたのだ。
安全神話の刷り込みだが、これらエネ庁が主張する「原子力への理解」「有効性」が、いかにインチキだったかは、既に福島原発事故によって実証されたと言っていい。