親分子分でめちゃくちゃに(左・安倍晋三公式サイトより/右・森喜朗公式サイトより)
ザハ案の白紙見直しが決まった新国立競技場だが、一方で、ここまでの混乱を生んだ裏に、政府と政治家の詐欺的とも言える不正工作があったことが、少しずつ明らかになってきた。
8月7日付の毎日新聞が報じたスクープによれば、新国立計画の事業主である文科省所轄の独立行政法人・日本スポーツ振興センター(JSC)が、昨年5月、基本設計の概算工事費を過少に見積もって公表していたことが判明。設計会社側の提示額が約3000億円であったにもかかわらず、JSCは1625億円と約半額で概算。資材の調達法や単価を操作していたという。
また、2015年に入ると、今度は文科省が過少報告をしていた。今年2月、施工するゼネコンから概算工事費が3000億円を超えると報告されていたのに対し、文科省側は約2100億円の工費で足りるとの試算結果を報告していたことが、第三者検証委員会に提出された資料より明らかになったのだ。
ようするに、文科省とJCSは新国立計画を成り立たせるために、青天井化する工費を世間から隠し通そうとしてきたのだ。
そして、ここでもちらついているのが、森喜朗元首相の影だ。というのも、この隠蔽工作を指示したのがほかならぬ森氏だったのではないか、という疑惑が浮上しているのである。
まずは森氏と新国立計画の関係について簡単におさらいしておこう。本サイトでも既報のとおり、もともと国立競技場は、東京が2016年五輪に立候補したときには建て直す計画などなかった。ところが、日本ラグビー協会会長だった森氏は、国立競技場建て替えを切り札に2019年ラグビーW杯誘致を画策。ラグビーW杯だけでは国民世論を動かせないため、五輪招致との抱き合わせプランをぶちあげて政界への働きかけを進めてきた。
そして、2011年、国立競技場の事業主であるJSCの理事長にラグビー協会の理事で自分の右腕だった河野一郎氏を就任させ、自らも「国立競技場将来構想有識者会議」の委員としてザハ案選定を決定した。
さらに森氏は昨年1月、東京五輪が決定すると、五輪組織委員会の会長に就き、やはり副会長に河野氏を押し込んで、新国立計画における“森体制”を確立。自分抜きでは計画変更がままならないような仕組みをつくりあげたのである。