そんな長渕が明日、川内原発前に姿を現し、メッセージを発すれば、たしかに外山氏のいうように、再稼働を阻止できるかもしれない。
もっとも、現実にそれをやる可能性は、なかなかむつかしいだろう。今夏の長渕は8月22日、静岡県富士山麓キャンプ施設「ふもとっぱら」で10万人規模のオールナイトライブを行なう予定。長渕本人も長渕ファンも、オールナイトライブの準備に余念がない状態だ。
長渕はこの富士山麓ライブについて「SPA!」(扶桑社)14年12月30日・15年1月6日合併号でこのように発言している。
〈数十年歌ってきて俺が一番感じてきたことは、自分がこの国を悲しいほどに、腹立つほどに愛しているということ。なのに、原発の問題などの自己矛盾は、散々考えても自分のなかでは答えが出ない。だったら、俺は、俺の歌はこれでいいのかと(中略)富士に問うてみたかった。10万人の力を借りて、砲弾ではなく、歌を霊峰にぶつけるかのごとく〉
しかし、原発問題に答えを出すために歌うのであれば、長渕がこの夏歌うべき場所は、富士山麓だけではない。川内原発のゲート前で歌うことこそ「俺の歌はこれでいいのか」と「問うてみる」ためには必要なことではないだろうか。
本稿冒頭で紹介した外山恒一氏は、川内原発ゲート前ゲリラライブで〈「ろくなもんじゃねえ」を繰り返し歌って“テーマソング”的にフィーチャーしてほしい〉と主張している。
原発事故によって「心を引き裂かれちまった/心をなじられちまった」(「ろくなもんじゃねえ」歌詞より)とならない前に、“第二の福島”をつくらないために、ぜひ、ゲリラライブを切望したい。
(新田 樹)
最終更新:2015.08.10 12:01