★第4位 「アメリカも中国もヨーロッパ諸国も国内問題が手一杯で、リーダーシップの発揮は国内向けの見せかけである。(略)その点、日本は国内問題がないから国際的に発言ができる」
日下公人『いよいよ、日本の時代がやってきた!』(WAC)
■日本は国内問題がない!? あまりにも楽観的な未来予測■
日本長期信用銀行出身の保守系(ガラパゴス?)エコノミストの日下氏。楽観的な未来予測をする類書多数の著者だが、今回の楽観的な未来予測の最たるものは「二〇一五年あたりから、日本の時代が始まる」というものだ。
「新たな『日本の時代』は(略)新しい道である。新しい道とは、たとえば『おもてなしの心』の入ったサービスが世界に広がることである」「この百年間は欧米崇拝だったが、そろそろ逆転するのではないか。それは『新文化の創造』という戦争である」
日本人礼賛本のありがちキーワードには、「和」の精神と並んで「おもてなし」がある。「お客を選ばずにどんな人にもおもてなし」をする「おもてなし」の精神を世界に普及(日本化)させようというのだ。
日下氏いわく、日本化を進めれば、世界的なリーダーシップがとれるようになる。しかも、日本はリーダーシップが発揮しやすい環境が整っている。というのも、冒頭の発言のように、「アメリカも中国もヨーロッパ諸国も国内問題が手一杯」だが、「日本は国内問題がないから国際的に発言ができる」というのだ。
日本には、福島第一原発問題も、沖縄米軍基地問題も、格差問題もないというのだろうか。
日下氏のプロフィールを見ていたら「原子力安全システム研究所最高顧問」という肩書きもあった。関西電力の原子力ムラの人脈ではないか。楽観的な未来予測が何をもたらしたのか、今もまったく反省がないらしい。
★第3位 「うちが世界最古の文明なのです。世界で最初にお酒を飲んだのは、我が日本でございます。ワインを飲んでいたと思われます。ブドウのかすが残っておりますので、ワイン発祥は我が日本がもっとも古い。つまり、1万2000年前から我が国は世界最古の国としてずっと続いているんですよ。それが誇りの持てる日本という国家です」
竹内睦泰『歴史問題をぶった切る 《最終解明版》』(共著者・倉山満、藤岡信勝/ヒカルランド)
■ワインの発祥は日本!? お笑い歴史修正主義者たちのトンデモ鼎談■
竹内氏は古神道の神主でもあり「古神道宗家・第73世武内宿禰」の称号を持つという受験界のベテラン講師。今回は、「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝、保守系コミンテルン史観でおなじみの憲政史研究者・倉山満と日本の歴史教育を論じ合っている。
「僕が日本史講師として腹が立っているのは、日本史は必修ではないということです。日本の歴史を考えるには、日本の神話を教えないとダメです。世界最古の歴史がある日本のアイデンティティを教えないと」と息巻くのだ。
「我が国は少なくとも1万2000年前に世界最古の文明を生んでいるのです。縄文土器は1万2000年前にありました。(略)中国は9000年前です。うちよりは3000年遅れています」と勝ち誇り、冒頭の発言のように、その世界最古の歴史のなかで、ワインの起源は日本なのだと明かす。
しかし、これでは、嫌韓本の著者たち(たとえば、皇族タレントの竹田恒泰氏)が得意のヘイトネタとしていた、“「なんでも韓国が起源だ」と主張する「ウリジナル」現象”とやらと同じではないか。ちなみに、竹内氏と倉山氏とをつないだのは竹田恒泰氏らしい。