いまさら言うまでもないが、在特会に象徴される「行動する保守」は、海外メディアから“国家主義的保守政権”と称される安倍政権、あるいはその政策を熱烈に支持してきた。いや、むしろ自民党下野時から安倍晋三首相再登板の間、自民党は彼ら「行動する保守」やネトウヨを積極的に政治活動に動員してきたのだ。安倍政権の屋台骨だといっても過言ではない。
実際、安倍首相が寵愛する高市早苗総務相と稲田朋美政調会長は昨年、ネオナチ団体代表とのツーショット写真の存在が発覚。山谷えり子国家公安委員長も、過去に在特会の幹部であった男性と密な交流があった。そして安倍首相自身もまた、在特会元幹部と仲良くツーショット写真を撮っていたことなどが判明している。安倍政権がネトウヨ政権と言われるひとつの所以だ。
よって、今回の朝日新聞編集員による「行動する保守」デモ参加者が安倍政権支持者であるとのツイートは、ただ事実を述べただけであり、なんら撤回・謝罪する類のものではない。むしろ、彼ら極右排外主義者らが「朝鮮人半島に帰れ!」「ブタ左翼皆殺し」などと触れ回りながら、首相肝いりの安保法案を支持していることにこそ、われわれは注目すべきなのである。
本サイトでもお伝えしたとおり、安倍首相は先日、国会前で行われた極右市民団体「頑張れ日本!」主催の安保法制推進デモを見て、「こういうのは初めてだ」と感激の言葉を吐いた。これだけ「行動する保守」との関係を問題視されても、安倍政権の性根は変わっていないらしい。
つまり今回、安保法制の必要性を謳う市民デモが、実のところ、外国人を排斥し殺意まで表明する連中により行われていた事実がはっきりしたことで、安倍政権の中身が、ネオナチ団体と変わらない、グロテスクな極右排外主義に染まっていることが、より鮮明になったわけである。にもかかわらず安倍政権は、この事実を素知らぬ顔でデマ認定し、安保法案に批判的な朝日への攻撃に利用する。
安保法制が国民の支持を得られないからといって、批判的なマスコミに抗議して屈服させる。しかも、事実とは真反対のデマ攻撃を用いて──。これは民主主義国家の為政者のやることとは到底思えない。
最後に、もう一つ事実を述べておこう。前述のとおり、8月2日の銀座・安保法制推進デモの参加者人数は約250名であった。一方、同日渋谷で行われた高校生による戦争法案反対デモの参加人数は、約5000人だ。“レベル”が違うのは数だけではない。推進デモのヘイターたちが叫ぶ「朝鮮人は半島に帰れ」と、反対デモの高校生らが訴える「戦争反対!」、どちらが人間としてまともか言うまでもないだろう。
“戦争のできる国”を目指す安倍政権、その広報メディアである右派新聞、そして極右ヘイト勢力とネトウヨ……彼らが根っこのところでつながっていて、今、一体となって戦争法案を推し進めようとしている事実を、私たちはきちんと認識すべきである。
(梶田陽介)
最終更新:2015.08.05 07:07