演習での夜間飛行も、整備補給能力の欠如などで羽田と百里は難しいが、哨戒機が配備された下総基地なら可能だ。
救難機の夜間飛行確保はもっと容易だ。厚木には飛行機の墜落、船の遭難、離島の緊急患者輸送のために救難飛行艇やヘリがいるが、飛行艇なら羽田、下総、百里。ヘリコプターなら館山においておけばよい。あるいは、原告団に「救難機だけは例外にしてほしい」と交渉する方法もある。飛行差止めを受けたとしても、原告が許せば飛行は問題ない。
さらに、想定外の状況が起きたとしても、夜間用は八戸、岩国、鹿屋、那覇の1R、2Rを使えば済むだろう。
いずれにしても、厚木基地の深夜早朝飛行が差し止められても、防衛や災害救助に致命的な影響を与えるような状況には至らないということだ。
むしろ、今回の判決について考えるべきは、自衛隊機の夜間飛行を差し止めたところで、騒音問題は根本的に解決しないという現実だろう。厚木基地は米海軍と海上自衛隊が共同使用しているが、爆音源は自衛隊機ではなく、その大半は米軍機なのだ。
厚木基地には米軍の戦闘機・F-18ライノが配備されているが、これはジェット戦闘機の中でも折り紙付きにうるさい。前出の文谷氏もこう証言する。
「海自八戸に、演習で空自の戦闘機が展開されると、エプロンから1km離れた官舎でも展開した空自F4のエンジン試運転で叩き起こされる。三沢でも滑走路から200m離れた地下室で、F-16の離着陸で会議が途切れた。厚木ならば一度でも相模大塚駅のホームに立てばわかる。レガホ(F-18旧型)でも連続離着陸されると勘弁してくれといった状態になる。今のライノ(F-18新型機)はエンジンを新型化し、性能も上がったが騒音も大きくなっている。昔からの住民でもたまったものではないだろう」
もちろん、今回の訴訟では米軍の飛行差し止めも請求に入っていた、しかし、一審も二審も「国の支配が及ばない第三者の行為」として差し止めは認められなかった。判決は、米軍を守るために影響の少ない自衛隊機をガス抜きに使ったという印象さえ受ける。