そもそも、政府が目の敵にしている「クマラスワミ報告」にしたって、例の吉田証言を取り上げているのはたった300字。多くの証言のうちのひとつにすぎず、吉田証言を疑問視する秦郁彦氏の話も合わせて紹介している。
そうした国連報告にムキになって修正を求めるだけでなく、「彼女と会った」というだけのブログにまで口を出して削除させるとは、これは「検閲」以外の何物でもない。自民党内部で「大使館ホームページで公開する以上、国際社会からは政府の公式文書とみられる」などという批判があったというが、公式であればなおさら安倍政権の偏執的な歴史修正主義体質を国際社会に印象づけることになるだけだ。国内向けのネトウヨ思考が国際社会でも通用すると本気で思っているのか。NATOの本部も、さぞ、日本はクレイジーだと思っていることだろう。国際的にそういう悪い印象を与えるという想像力も働かないほど、いまの政府はネジが外れているのだ。
だが、政府による“検閲”は、これだけではない。一昨日行われた衆院平和安全法制特別委員会でも、野党は今月始めに防衛省に「イラク復興支援活動」活動状況についての内部文章の開示請求を行ったが、渡されたのは文章のほぼすべてが黒く塗りつぶされたシロモノだったことを訴え、正しい情報開示を求めた。しかし、自民党はこうした追及を「特定秘密保護法」を盾にうやむやにし、強行採決に突入したのだ。
言論弾圧に検閲……。安倍政権の異常性は、今後さらに増幅していくのだろう。
(水井多賀子)
最終更新:2015.07.23 09:54