又吉直樹『新・四字熟語』(幻冬舎)
本サイトが予想した通り、又吉直樹が見事『火花』(文藝春秋)で芥川賞を受賞した。終わりの見えない不況にあえぐ出版業界にとってこれ以上ない吉報にお祝いムード一色だ。既報のとおり、又吉と文壇の関係、最近の芥川賞の傾向を考えれば、今回の受賞は既定路線だったといえる。
しかし、ひとつの危惧がある。この小説家・又吉の成功が、お笑い芸人としての又吉を終わらせてしまうのではないか、という危惧だ。
ビートたけしがかつて「お笑いとは絶対につかまらない運動のことである」と語ったことがあるが、あらゆる表現のなかで、お笑いはもっとも速度の速いもの、スピードのあるものだ。つねに価値観を相対化し、転倒させなくてはいけない上、反射神経も求められる。軽い存在であり続けることが必要なのに、権威化し、人に気を遣われる存在になると、途端におもしろくなくなってしまう。小説や映画という別の表現に手を出すと、スタティックになって、お笑い芸人としては終わってしまうのではないか。
ましてや、芥川賞など獲ってしまったら……。
本サイトでは、又吉が『火花』を「文學界」(文藝春秋)に発表した際、芥川賞を獲る可能性が高いとしたうえで、こうした危惧を指摘していた。以下再録するので、ご一読いただきたい。
(編集部)
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昨日1月15日、第152回芥川賞に小野正嗣の「九年前の祈り」(「群像」9月号/講談社)が、直木賞に西加奈子の『サラバ!』(小学館)が選ばれた。……が、出版業界ではすでに次回の芥川・直木賞が話題の的となっている。そう、お笑いコンビ・ピースの又吉直樹が発表した中編小説「火花」が、「芥川賞か直木賞どちらかの候補になるのは確実」と見られているからだ。