おそらくこうした執拗な引き留めは、自衛官の志願者数が年々右肩下がりで優秀な人材が減っていることへの組織的な焦り、そして、退職者を出すと、上官の責任問題、失点になることが作用しているのではないかと思われる。
しかし、この退職したくてもできないという状況が、自衛隊内での自殺の大きな原因になっているのは間違いない。しかも、集団的自衛権、新安保法制で退職者が増えればますます、引き留め工作は激しくなるだろうと思われる。そして、派兵された隊員だけでなく、自衛隊全体でさらに自殺者が増えていく。
首相・安倍晋三は5月26日の衆議院本会議で「(新安保法制での自衛隊の)リスクは残ります。しかし、それはあくまでも国民の命と平和な暮らしを守り抜くために自衛隊員に負ってもらうものであります」と述べるなど、“そもそも自衛隊なんてお国のために死んで当然”という本音をさらけ出している。そう、この男の頭のなかには、自衛隊員が命を落とす可能性を語ることで自らの支持を落とすのはまっぴらだという保身の気持ちしかないのだ。
労働者の生命などまったく顧みないトップと自殺まで追いつめられる社員たち。まさに自衛隊は“ブラック中のブラック企業”と言っていいだろう。
(野尻民夫)
最終更新:2015.06.02 07:24