そして林は母親を批判したいがためか、悪質とも思える事実の捏造さえ行っている。
「そこまで(子育て)の間が、本当につらかったら、生活保護や児童扶養手当などを貰ってもいいじゃないですか。川崎のお母さんは報道によると、もらっていなかったみたいですけど」
いやいや林センセイ、センセイが長期連載を持つ「週刊文春」の3月5日号では生活保護についてこんな記述が存在しますよ。
「(被害者の)遼太君の母親は西ノ島で看護師の助手として働いていたが、給料は十分ではなく、結局は生活保護を受けるようになったという」
ようは自分たちが決めつけた親子像のために、現実に起きていることなんて一切無視なのだ。さすがは心霊だの予言だの前世だのと言って人心を惑わすスピリチュアリストと、その信奉者のコンビだけある。
もっとも、今回、林がしつこくこの問題に言及した動機は、母親問題を語りたいというより、2カ月前、自身に巻き起こった批判に腹が立ったということだろう。対談が進むにつれ、彼女はこんなことを言い出した。
「社会で起きたことを作家なりに分析したり、違うんじゃないかと言ったりすると、即座に叩かれる。(略)みんな叩かれるのが嫌なんです。私のエッセイにしたって、論争が起きたっていいはずですが、紙のメディアでは誰も言わない。私はこの仕事を30年以上やってきて、今ほど言論が抑えられている時代はないと思いますね」
確かにそれは正論ではあるが、しかし「論争が起きたっていい」と言いながら、一方「叩かれる」と怒りを表明するのは、いかにも作家タブーで守られてきた林らしい物言いでもある。紙のメディアで誰も言わないのは、“大作家”である林への配慮だということを是非お忘れなきようお願いしたい。
(伊勢崎馨)
最終更新:2015.05.19 11:24