だが、安易な俗流日本論に熱中しすぎると、そのうちダシに使われた人々から失望される。その前に、彼らの声や生き様を真摯に見つめ直すことが必要だろう。たとえば『境界の民』は、無国籍のベトナム難民、ウイグル人ら抑圧されている民族、政治的に相克する2つの国家をルーツに持つ者のような、国民国家体制の「境界」で生きる人々に焦点をあてたルポルタージュである。国家という枠組みに固執するネット右翼こそ、こうした書籍を読むべきだ。
昨今、日本では“反日国か親日国か”という二分法の語法ばかりが蔓延っている。言うまでもなく、それほど単純なやり方で物事を把握できるはずがあるまい。
(都築光太郎)
最終更新:2017.12.23 07:19