いかにもベタな見識で書くのが憚られるが、温故知新という言葉は、新しきを知るからこその「温故」である。あの頃の奥ゆかしい日本語を思い出すのは結構な働きかけだが、「ご先祖様に対して誇れる国にしたい」を一義に日本語を見つめ直すべきではないと思う。多様な文化や言語を吸収して揉み込んだからこそ育まれたのがこの日本。そして、粗雑と思われがちな新しい日本語からも、新たな風土や文化が芽を出すことがある。この姿勢こそ、先祖から伝わってきた日本らしさだと思うのだけれど。
(武田砂鉄)
■武田砂鉄プロフィール
1982年生まれ。ライター/編集。2014年秋、出版社勤務を経てフリーへ。「CINRA.NET」「cakes」「マイナビ」「Yahoo!ニュース個人」「beatleg」「TRASH-UP!!」で連載を持ち、「週刊金曜日」「AERA」「SPA!」「beatleg」「STRANGE DAYS」などの雑誌でも執筆中。近著に『紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社)がある。
最終更新:2018.10.18 03:42