出自での偏見に悩んだ2人(左/ざわちん(ZAWACHIN)オフィシャルサイト 右/秋元才加オフィシャルブログ「ブキヨウマッスグ。」Powered by Amebaより)
いまだ注目を集め続ける川崎中1殺害事件。例によって被害者の少年、加害少年の家族のプライバシーが連日書き立てられている。
なかでも気になるのが、加害少年の母親のルーツに関するものだ。週刊誌で強調されているのが、母親はフィリピン人でフィリピンパブのホステスをしていたことや、父親がそのお客さんだったことだ。たとえば「週刊文春」(文藝春秋)2015年3月12日号では、母親がフィリピン人ホステスの友達を大勢連れてきて酒盛りをし、大騒ぎしていたことなども報じていた。
こうした報道の影響か、加害少年の自宅では、家のブロックに「フィリピンにかえりたい」と落書きされるなどの嫌がらせを受けているという。
もちろん犯罪を検証する際、加害者の背景を知ることは重要だが、ことさら国籍を強調するこうした報道には違和感がある。この事件で、フィリピン人とのハーフに対する差別が助長されることが心配だ。
2010年の厚労省の調査によると、婚姻件数のうち約4.3%、約23組に1組が国際結婚。なかでも多いのが、韓国・朝鮮、中国そしてフィリピン人との結婚である。
国際結婚の増加にともない、ハーフの子どもも増えているが、ハーフであることを理由にした差別やいじめはいまだなくならない。とくにフィリピン人とのハーフに対しては、とりわけ根強い偏見がある。
日本人とドイツ人のハーフであるサンドラ・ヘフェリン氏は、著書『ハーフが美人なんて妄想ですから!!』(中公新書ラクレ)のなかで、知人の体験談としてこんなエピソードを紹介している。
外国人を母親にもつ子どもが何人か通っていたある日本の小学校でのこと。保護者がダンスなどの余興を発表することになった際、「ドイツ人のお母さんが『私、ダンスを踊ってもいいですか?』と申し出たところ、まわりのママたちから『素敵!踊りってバレエですか?』」などと盛り上がったのだが、「フィリピン人のお母さんが、『私もダンスを踊っていいですか?』と聞いたところ、お母さん方の間でシラーッとした微妙な雰囲気が流れ」、「後で『あの人、ダンスできるとか言っているけど、水商売で習ったダンスなんじゃないの』と陰口三昧だった」のだという。
こうした「『お母さんがフィリピン人なの』と言うと、すぐに相手は『お母さんは水商売で、お父さんは元お客さんに違いない』と勝手に決め付ける風潮」に対し、著者のヘフェリン氏は「決め付けはよくないのはもちろんのこと、たとえその子のお母さんが水商売をしていたとしても、だから何?」と言う。そもそもハーフでなければ、父親と母親がどこで出会ったかなどいちいち詮索されること自体ないだろう。