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元祖『問題のあるレストラン』? 70年代に中山千夏主演で超過激な“フェミドラマ”が

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フジテレビ系で放送中のドラマ『問題のあるレストラン』(番組公式サイトより)


 フジテレビ系のドラマ『問題のあるレストラン』が話題となっている。その主人公・田中たま子(真木よう子)は、かつて勤めていた大手飲食会社に反旗を翻し、同社が都心で経営するレストランのすぐ近くに小さなビストロを開く。そのきっかけは、たま子の親友で同僚の藤村五月(菊池亜希子)が、仕事での失敗の責任を追わされ、役員会議で全裸で謝罪させられるという屈辱的なセクハラを受けたことだった。たま子のもとには、五月と同じく会社の上司や同僚、あるいは夫や父親から傷つけられた女たち(女の心を持つゲイのパティシエも含む)が集まり、やがて協力して男たちに立ち向かっていく。そんな筋立てが女性を中心に視聴者の共感を呼んでいるようだ。

 このドラマが始まるのと前後して筆者は、いまから40年ほど前にも男社会に対する女の復讐を描いたドラマがあったことを知った。1970年10月から翌年2月まで放送された『お荷物小荷物』がそれだ。運送店を営む男ばかりで完璧な家父長制・男権主義を生きる一家と、そこにお手伝いさんとしてやって来た田の中菊という若い女による奇想天外な攻防が毎回繰り広げられた。じつは菊は同家に恨みを持つ本名を今帰仁(なきじん)菊代という沖縄人であり、最終回ではホームジャックしてついに復讐を果たす。残念ながら全話のうちVTRが現存するのはこの最終回のみで、現在は横浜の放送ライブラリー(外部リンク )で視聴できる。

『お荷物小荷物』は大阪の朝日放送が制作し、同局が当時ネットしていたTBS系で放送された。劇中では、黒澤明の映画『生きる』などで知られる名優・志村喬が家長の役を務めたほか、志村の孫の五兄弟のうち三男を昨年亡くなった林隆三が、四男を『建もの探訪』(テレビ朝日系)のリポーター役でもおなじみの渡辺篤史が演じた。さらに主役の田の中菊には、子役出身の俳優でタレントの中山千夏が扮している。脚本は佐々木守。彼にとってこのドラマは、ウルトラマンシリーズなどと並ぶテレビでの代表作だ。そしてプロデューサーの山内久司は、このあと『必殺仕掛人』(72年)に始まる必殺シリーズで大ヒットを飛ばした(なお山内も林と同じく昨年亡くなっている。筆者が『お荷物小荷物』のことを知ったのは、山内の訃報を受けて彼について調べていたときだった)。

 必殺シリーズとまではいかないまでも、『お荷物小荷物』は大きな反響を呼んだ。全13回の予定が5回分延長され、最終回はシリーズ中最高の視聴率(東京29.2%、大阪36.2%)を記録した。これを受けて71年12月からは続編として『お荷物小荷物・カムイ編』が放送されている。この第2シリーズでは登場する一家はそのままに、今度はアイヌ民族の少女が「酋長」の命を受け、一家に囚われているクマを救出するために乗り込むという設定に変わった。ちなみに劇中に登場するクマは本物が使われたという。

 沖縄人の復讐という設定の背景には、あきらかに沖縄返還(72年5月)を目前に控えた時代状況があった。後年、放送評論家の志賀信夫は最終回のVTRを見て、《男中心社会の日本は沖縄問題を軽視していると、沖縄人から反発を食うぞ》という警告を読み取り、《テレビ番組にも、こんな元気のいい、社会に高らかにメッセージを発した時代があったのかと、舌を巻いた》という(志賀信夫『映像の先駆者125人の肖像』日本放送出版協会)。

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