仙台空港の民営化も震災によって降って湧いたような話である。2015年度に「国管理空港の民営化第1号」になることが、アレヨアレヨと言う間に決定した。民営化といっても設備インフラは国が保有したまま運営のみを外出しする、コンセッション方式と呼ばれるものだ。昨年暮れまでに運営権選定に三菱商事・楽天、三菱地所、ANAホールディングス、東急グループ、イオングループなどが応募している。利用者はピーク時の年間330万人(2006年)から緩やかに減少し、震災で大きく落ち込んだものが徐々に回復、現在は震災前の300万人程度という。これを村井知事は「県や国の介入しない純粋な民間企業の活力」によって、30年後までに乗客・貨物数ともピーク時の倍の600万人・5万トン(年間)に引き上げ、これをもって「復興の象徴」にしようというのだ。
具体的にどんな絵が描かれているのか。宮城県の委託を受けて野村総研がつくったマスタープランがある。ここでは仙台空港を「東北のグローバルゲートウェイ」と位置付けていて、とにかく夢のような話が盛りだくさんだ。まず、空港をビジネスジェットの中継地点にして、臨空・臨港ビジネス交流エリアに商品展示施設やホテル、研究施設等を建設する。LCC路線を充実させ、免税店や観光クルーズなど新国際ツーリズムエリアを作る。東北の物流ハブ空港として、仙台港と連携し、マルチモード物流エリアを作り、東北各地の企業の販路拡大と産業のグローバル化を図る。その上で、村井知事は「将来的には24時間空港化を目指す」というのだ。
さて、空港の民営化とグローバルゲートウェイ化、これに先に紹介した東北メディカル・メガバンク構想を加えると何かピンとこないだろうか。そう、阪神・淡路大震災後の神戸で発想された医療ツーリズムの受け入れだ。民営化した仙台空港の隣接地域を医療特区にして高度医療施設を集積する。あるいは、東北大学病院でも診察を受けられるようにする。治療の合間に松島で観光し、作並や秋保で温泉に入ってもらう。さらに震災復興カジノができれば、外国の富裕層に遊んでもらうのも都合がいい。そんな思惑が見え隠れしている。
復興カジノはハリケーン・カトリーナでも使われたショック・ドクトリンの定番だ。東日本大震災の直後にもにわかにカジノ構想が持ち上がり、新聞や雑誌に「カジノ収益を復興財源に」といった見出しが躍った。計画は空港を中心に、慰霊メモリアルゾーン、複合型農園ゾーン、復興カジノゾーンの3つからなる「仙台エアポートリゾート構想」と呼ばれた。だが、この時は当時の野田佳彦首相が国会で「カジノ解禁については、政府としては検討するつもりはない」と明確に答弁したため、立ち消えになっていた。それが第二次安倍政権の発足で再び激しく燃え始めているというのだ。すでに、仙台空港民営化に関するシンポジウムなどでもカジノがおおっぴらに語られるようになっているという。